思い出話⑧ 高校時代 (&製作記の続き)

高校時代の思い出話をする前に、前回、「中学時代にいろいろ反発していた」と書いたことについて、少しご説明いたします。

私の中では黒歴史なのですが、今の自分がどう出来上がってきたのかを振り返ることは、今後を生きていく上で、意味のあることのような気もします。

何に反発していたかというと、いわゆる受験制度で、特に進路指導の先生の言う事は絶対に聞かないゾ!と、意固地になってました。
一言で言うと、「良い高校に入って、良い大学に進み、良い会社に就職すれば定年まで安定して過ごせる」という、当時としては当たり前の考え方に反発していたというわけです。
プロのギタリストになりたいという夢があったことも、この考えを後押ししていた気もします。

なので、進路相談の時も、いわゆる進学校には行かないゾ!と断言していたのですが、「成績が悪いから行けない」と思われるのはイヤなので、勉強だけは頑張って、学年上位の成績は維持していました。

高校受験が近づいてきた時、普通高校には興味が無かったのと、何か物作りの道に進めるような気がして、工業高校という選択をしたのですが、当時の私の成績だと、受験せずに面接だけで入学できる、いわゆる推薦入学が適用となって、受験制度に反発していた私にはピッタリの状況になったのでした。

中学の卒業アルバムで、このような表情をしていた理由をご説明しました。

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というわけで、無試験で入学した高校でしたが、将来の目標などは特になく、でもなぜか勉強だけは頑張りつつ、毎日、ギターを担いで通学する日々でした。
ただ、専攻した電子工学の授業は面白く、実験や実習なども多くて、また、放課後は仲間とギターを弾いてと、楽しい高校生活ではありました。

実習中の写真、私は左端です。
この頃に学んだ、音響物理の知識と経験は、ヴァイオリン製作に役立っている気がします。

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こちらは、在学中に取得した、電気工事士の免状です。
この頃、ギタリストになる夢はさすがに無謀だと分かってきた時期で、この資格を取った頃は、漠然と、電気屋さんにでも就職するのかなと思っていた記憶があります。

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3年間、仲間と組んでいたバンド活動は、今でも良い思い出です。
決して上手いバンドではなかったのですが、何度か、ライブのステージで演奏もしました。
当時の写真は一枚も残っていないのですが、卒業アルバムに、文化祭で演奏した時の写真が残っていました。(私は左から2番目です)
この時は、その頃に流行っていた日本のロックを演奏した記憶があります。
サザンオールスターズ、ツイスト、ゴダイゴなどの曲がレパートリーでしたが、この写真の時は、「銀河鉄道999のテーマ」を演奏していたと思います。

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この写真は、修学旅行の時です。
中学時代に比べ、将来への悩みも特になく、仲間とともに毎日を楽しく過ごしていたことが、表情から伺えます。

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とはいえ、3年生の後半ともなると、そろそろ進路を決めなくてはならず、夏休みに進路指導の教室に行くと、クラスメートと担任の先生が居て、黒板に、いろいろな企業の名前が書かれていました。

今思うと、どれもが有名な企業ばかりだったのですが、私としては、あまりピンと来ず、仲間たちが先に決めてくれれば良いと、のんびり構えていました。
ですが、突然、先生が、「菊田はここが良いんじゃないか?」と言い出し、黒板に私の名前を書いてしまったのでした。
仲間たちも、そうだそうだ~と騒ぎ立てて、私も後に引けず、結局、一言も発言することなく、私の進路は決まってしまいました。
入社試験も無事に合格し、翌年の4月からNHK名古屋放送局に勤務することになったのでした。

というわけで、なんとも主体性のない就活が一瞬で終わり、その後も、音楽活動中心の毎日でした。
今でも信じられないのですが、3月31日、翌日が入社式という状況の中で、自主開催でコンサートを開き、仲間とステージに立っていたのでした。
この、余裕というか、世間知らずというか、世の中を舐めているというか(笑)、鈍感で図太い精神状態は、今の自分からは想像もできないのですが、、良くも悪くも、エネルギーがあった頃だったような気がします。

これは、高校の卒業アルバムの写真です。
当時は、堅苦しいアルバムではなく、自由に撮影しようという風潮だったようです。
それにしても、緊張感が無さすぎですね。
当時の自分に、「もう少し気合い入れて生きろよ」と言ってあげたいです(笑)

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結局、私は高校受験を経験しませんでしたし、大学進学にも興味が無かったので、思えば、一度も自分の偏差値というものを知ることなく、今日まで過ごしてきたことになります。
40歳の時に、今度は試験を受けてクレモナの高校に入学することになったのですが、、やはり因果応報ということでしょうか(笑)、、。

ともかく、この年から、20年間の放送局人生が始まるのですが、また別の機会に、少し思い出話をできればと思っています。



では、進行中のヴァイオリン製作のこともご紹介します。

アーチが終了したら、反対側を削って厚みを出していきます。
毎回、突き抜けそうで怖い作業ですが、丸ノミでザクザク削り、、

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ミニカンナとスクレーパーで仕上げます。
アーチの仕上げ以上に、コンマ数ミリで音色が変わる微妙な作業です。

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表板はバスバーを貼り付け、

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適正な高さ、カーブを意識して削ります。
バスバーの形状によって、特に低音の響きが変わってきますので、表板の材質を検証しながら慎重に仕上げます。

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横板に裏板を貼り付け、内型を抜きます。
新モデル「フォルマP」として製作した内型の役目は、ここで終わりです。

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ボディを閉じる前の、最終確認です。
やり残したことが無いか、疑心暗鬼になる瞬間でもあります。

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ラベルのシリアルナンバーも、128番目となりました。

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クランプでニカワ付けしてボディを閉じます。

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ようやく、フォルマPのボディが完成しました。
黄金期のストラドらしい、安定したシルエットのように思います。

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比較のために、こちらは、同時に製作中のストラディバリ1705年モデルの裏板です。
写真では微妙な違いですが、実物を手に取ると、明らかに違うモデルの楽器であることが伝わってきます。

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気がつけば3月、春もすぐそこまでという感じですね。
陽当たりも良くなってきて、猫たちには過ごしやすい季節がしばらく続きそうです。

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ちび丸は、春眠暁を覚えず、ですね。

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# by violino45 | 2023-03-05 14:08 | 思い出話 | Comments(2)

思い出話⑦ 中学生時代 (&製作記を更新)

中学生時代と言えば、毎日ギターを弾いていたことしか思い浮かばないのですが、なぜか、その頃の写真は一枚もなく、残念です。

当時はスマホはもちろん、デジカメもなく、カメラと言えば実家にあったフィルムカメラだけで、それも修学旅行に持っていくぐらいでしたので、日常の風景はほとんど残っていないです。
でも、それが普通の昭和の家庭でしたし、特に不満もなく、当たり前のことだった気がしています。

今は、スマホで日常を撮影して、SNSで共有することが普通になり、隔世の感がありますね。
Z世代という言葉もあるようで、デジタルネイティブな感覚で現代を生きている若者を羨ましく思うこともありますが、フィルムカメラからスマホまで、技術が進歩した時代を生きて来られたことは、それはそれで楽しい経験だったと思います。


それはともかく、先日、実家で荷物整理をしていたら、中学の卒業アルバムが出てきました。
当時は、自分でデザインした「ろうけつ染め」でアルバムの表紙を作っていたようで、何を描いたか自分でも忘れていたのですが、あらためて見てビックリです。
その頃から、ウズマキのデザインに惹かれていたのでしょうか(笑)、、数十年後にヴァイオリンを製作するとは思ってもいなかった時期に、不思議です。

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そして、反対側には、荒波に飲み込まれそうな小舟が、、
見事に将来を暗示しているというか、、不安の表れでもあったのだと思います。
でも、一つ救われるのは、波から逃げているのではなく、立ち向かっている図案であるということですね。

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で、アルバムに載っていた写真が、これです。
なんとも言えない表情だなと、我ながら思います。
思い返せば、いろいろな物ごとに反発していた時期だったような気がします。
他人(大人)の敷いたレールには絶対に乗らないぞ、、的な(笑)
当時の、文字通り中二病だった時代のことは、また別の機会に。。

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製作記も少しご紹介します。

前回ご紹介しました、「フォルマP」のヴァイオリン、裏板にデザインを写し、切り抜くところから本格的な製作の開始です。

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丸ノミでザクザク削っていきます。

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この段階ではモデルの違いは関係なく、ヴァイオリンとしての全体的なバランス、そして、木材の性質を見極めながら削ります。

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パーフリングを入れた後は、ミニカンナで全体のアーチを整えていきます。
今回、ご依頼主様との話し合いの中で、いつもより少し低めのアーチにすることにしました。
といっても、0.5ミリ低いだけなのですが、それでも、造形には違いが出てきて、また、モデルの違いもあるので、まとめるのは難しかったです。

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スクレーパーで、全体を整えながら仕上げていきます。

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造形の美しさとともに、音響にもかかわる部分なので、アーチの仕上げは慎重に行います。

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同時に製作中の1705モデルのアーチは、こんな感じです。
こうして見ても、その違いはほとんど分からないですね。
でも、やはり手慣れたモデルのほうが、アーチはまとまりやすい気がしました。

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続きはまた次回ご紹介します。

少しずつ日照時間も長くなってきて、猫たちも、窓辺にいることが多くなりました。

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ビビ丸が寝ていると、他の猫たちがやってきて一緒に転がります。

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ちび丸だけは、いつも、孤高のお姫様という感じですが、他の猫と仲が悪いわけではなく、ときどき、楽しそうに追いかけっこしています。

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ビッキーは今年の夏で2歳になりますが、まだまだ仔猫のように活動的です。
見事なジャンプを見せてくれます。

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まだまだ寒い日が続きますね、ご自愛くださいませ。

# by violino45 | 2023-02-12 15:50 | 思い出話 | Comments(2)

次回作ヴァイオリンは、新モデル「フォルマ P」

新作ヴァイオリンを製作する時、最初にモデルを決めますが、私は2005年以来、ラッザリ師匠から受け継いだストラディバリ「1705年」モデルをメインとして製作してきました。

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1705年モデル、2007年チャイコフスキーコンクール受賞楽器


私自身、このモデルを大変気に入っておりまして、実績のあるこのモデルを継続して使用することで、安定したクオリティの楽器を製作できていると思います。

一方で、確実に良い結果を出そうとするあまり、新しいモデルの使用に対して消極的になっていたのも事実でした。
このあたり、製作家にとって悩ましいところです。
お客様にお届けするヴァイオリンを最高のものに仕上げるために、実績のあるモデルを使うのは良いことですが、製作家自身の成長のためには、新しいモデルにチャレンジして学び続けることも大切だからです。

そういう気持ちを察してか、長年の知人でもあるお客様の提案で、次回作は新しいモデルでの製作に挑戦させていただけることになりました。

いざ新しいモデルでの製作となると、悩みましたが、お客様とも相談して、ここは基本に立ち返って、ストラディバリが使用していた内型(フォルマ)をそのまま拝借して使ってみようということになりました。

そこで登場するのがこの本です。
ストラディバリが実際に使用していた内型を、原寸大で撮影した写真集です。

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ストラディバリのフォルマと言っても、初期から黄金期に渡って数が多く、それぞれに魅力があるのですが、今回選んだのは、黄金期である1700年代に多く使われたと言われている、「P」という名の内型です。


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内型の上に、Antonio Stradivari Pという文字が書かれています。
Pは、Prima(プリマ)の頭文字と言われています。
Primaはイタリア語で「最初の」という意味とともに「第一の」という意味も含んでいて、当時のストラディバリが好んで使っていたことが想像されます。

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ストラディバリのお気に入りだったことは、写真のように、内型を修理しながら製作していたことにも表れていて、実際、その後の研究によると、黄金期の名器とされるヴァイオリンの多くが、この「フォルマ P」で製作されたとされています。
ちなみに、有名な1715年クレモネーゼは、「P」ではなく、少し大きめのモデル「G」(Grande)で製作されたようです。

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今回、「フォルマ P」を使うにあたり、オリジナルのアウトラインを忠実に再現することを決めました。
つまり、この内型は左右が非対称なところがあるのですが、それはそのまま活かすということ、また、ブロック材の大きさや位置なども、オリジナル通りに製作することを条件としました。

ですが、ブロック材や横板を貼り付ける方式は、現代的に鉄の万力を使うことにしましたので、内型の見た目は、少し雰囲気が違うことになりました。
完成した内型が、こちらです。

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この段階では、最終的にどのようなヴァイオリンになるのか、想像するのは難しいですね。

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今後、このモデルで製作する楽器は、「フォルマ P」と呼ぶことにします。

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実際の製作に入ります。
内型にブロック材を貼り付け、ヴァイオリンの形に削ってから横板を曲げて貼り付けます。
ブロック材の削り方によって、コーナー部分の造形が違ってきて、ヴァイオリン全体の雰囲気も変わってきます。
同じ「フォルマ P」を使った楽器でも、違う印象の楽器になるのはこうした理由によります。

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横板の装着が終わり、ヴァイオリンらしい形になってきました。
やはり黄金期らしい、端正かつ力強い、美しいシルエットです。

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こちらが↓、同時に製作中の1705年モデルの、シルエットです。
その違いは微妙ではあるのですが、感じていただければ幸いです。
内型に「Prima」と書かれていますが、これは、私が作った1705モデル内型の1号器という意味です。

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完成した横板のアウトラインを、裏板に描いていきます。

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今回は、少しトラ杢の幅が広めの2枚板を使用しました。
続きは、また次回ご紹介させていただきます。

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クレモナは、寒い日が続いていて、氷点下になることも多くなりました。

ベランダからの景色も、霧でよく見えない日が多いです。

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仕事をしていると、暖を求めてか、ちび丸はよく膝に上ってきます。
しばらく仕事の手が止まるのですが、良い休憩タイムとなっています。

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でも、数分経つと、今度は暑くなってか、どこかに行ってしまうので、仕事の再開です(笑)

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ビビ丸はいつも人気者で、他の猫たちがくっついてきます。
一歳年上のお兄さん猫、近くにいると落ち着くのでしょうか。

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クロ丸も、ビビ丸にくっついて寝ていることが多いです。

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# by violino45 | 2023-01-22 15:35 | 製作記 | Comments(2)

新旧ヴァイオリン、弾き比べ動画。

昨年10月にヴァイオリンが完成した時、ふと思いついて、手元にある2011年のヴァイオリンと弾き比べてみました。

私の拙い演奏では厳密な音の比較はできないのですが、大まかな音色の違いは分かる動画になりましたので、ご覧いただけたら嬉しいです。

内容は、
①2弦に渡るメロディ、②トナリゼーションのフレーズ、③アンダンテのメロディを、2011年→2022年の順番で弾いています。
モデルは2台ともストラディバリ1705年モデルで、弦はどちらもエヴァピラッツィ・ゴールド(G線シルバー巻き)です。






ご視聴ありがとうございました。
撮影した時は、まだ暑かったので、季節に合わないTシャツスタイルで失礼しました。

それはともかく、、この2台のヴァイオリンの音の違いに、11年という時間がどの程度影響しているのか、簡単には言及できません。

楽器の音を決める要素はさまざまで、木材、製作技術、フィッティング、調整方法など、考慮すべきことが多いからですが、私が2台のヴァイオリンを弾き比べて、客観的に感じたことを、以下、列記いたします。

第一に感じたのは、2022年の最新作は、まだニスが完全に乾いていないので、全体的に、少し湿ったトーンというか、反応の悪さを感じます。
良く言えば、柔らかい音色ですが、細かいニュアンスが伝わりづらい気がします。
ただ、ニスは最初の数か月で乾燥が大きく進むので、徐々に改善していくものと思われます。
いずれにしても、私が製作する楽器としては、現時点での最良の音色を実現できたヴァイオリンで、納品したお客様には大変喜んでいただけました。

一方で、長年、宮地楽器の見本品だった2011年の楽器は、ニスは完全に乾き、また、木材も乾燥が進んで、全体的に反応が良く、細かいニュアンスが伝わりやすい楽器となっています。
ですが、使用した木材の個性か、音が少し硬い印象を受けます。
このあたり、製作時に厚みの設定やバスバーの削り方を工夫して、音色を柔らかくコントロールもできたのですが、11年前の私は、あえてそれをせず、強い音の楽器を目指したことを記憶しています。

おそらく、今、ボディを開けて、厚みやバスバーを削り直せば、音色の改善もできるのだと思いますが、それはせず、このままこの楽器の成長を見守りたいと思います。

というのも、音の硬さを感じる一方で、木材が熟成して馴染んできたことで、音に深みというか、味わいが増していることも事実なので、その良さを活かしていくのも意義深いと思えるからです。

今回、新旧のヴァイオリンを比較することで、私自身、新たな発見もできましたので、今後も、機会があれば、いろいろな形で試奏動画にトライできればと思っております。

本当は、もっと演奏が上手な方に弾いていただいたほうが聴きやすい動画になると思うのですが(笑)、逆に、拙い私の演奏のほうが、楽器の音色がストレートに記録に残る気がして、お耳汚しで恐縮ですが、当面は自身で弾くようにしたいと思います。
今後とも、拙ブログをよろしくお願いいたします。

2022年の最新作のヴァイオリンは、こちらの記事でご紹介しておりますので、ご覧いただければ嬉しいです。
https://violino45.exblog.jp/29399001/

2011年のヴァイオリンは、こちらの記事(宮地楽器さんの歴代展示楽器の紹介)の中で、2代目ヴァイオリンとしてご紹介しております。

クレモナも真冬の寒さが続いておりますが、4匹の猫たちは元気に過ごしております。

紅一点のちび丸は、いつもマイペース。

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最近はソファに自力で登れるようになった、ビビ丸。

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クロ丸は、相変わらず怖がりですが、少しずつ馴染んできました。

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一番活発なビッキー、誰も遊んでくれないと退屈そうです。

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# by violino45 | 2023-01-14 13:31 | 動画 | Comments(2)

本年もよろしくお願いいたします & 日本滞在中のイベントのご報告

旧年中は大変お世話になり、ありがとうございました。
2023年もよろしくお願いいたします。
皆様の御健康と御多幸を、心からお祈り申し上げます。

喪中のため、恒例となりましたウズマキ年賀でのご挨拶は控えさせていただきますが、2011年から続けてきましたウズマキ写真が途絶えるのも残念ですので、写真だけ、ご紹介させていただきます。


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さて、タイトルにも書きましたが、12月の日本滞在中に参加いたしましたイベントについて、写真にてご報告させていただきます。

まずは、12月2日から3日間、宮地楽器さんにて開催された展示会、そして店内ホールでのイベントのご報告です。

宮地楽器店内の展示スペースに、製作家9名の楽器が展示されました。

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壁には、大聖堂の写真や、500年ほど前のクレモナの地図(現在とほとんど同じです)、そして宮地楽器スタッフさんがクレモナで撮影された写真が貼り付けられ、クレモナの雰囲気が再現されました。

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私は、最新作の展示はできませんでしたが、左から、2006年のビオラ、2021年のヴァイオリン、そして2011年と2005年のヴァイオリンと、歴代の宮地楽器さんでの展示見本楽器を並べてお披露目させていただきました。

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2005年からの17年間の宮地楽器さんとのコラボレーションの歴史を、私自身思い返しながら、感慨深く展示会に参加させていただきました。

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展示会には、たくさんのお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

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3日間、多くのお客様に試奏いただけて、私自身とても勉強になる展示会でしたが、初めて参加した若手製作家にとっても、貴重な機会となったと思います。

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今回、会場の入り口では、製作者による実演コーナーが設けられ、順番に実演させていただきました。
根本和音さんは、ウズマキの製作工程の実演。

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高橋明さんは、楽器のアーチ削りの実演。

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私も、ニスのリタッチで参加いたしました。

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また、展示スペースの一角では、楽器製作の体験コーナーが設けられました。
こちらは、パーフリングの体験コーナー、宮地楽器スタッフの山田さんが指導しての作業でした。

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そして、アーチ削りの体験も、子供たちにとって良い思い出になったと思います。

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さて、宮地楽器店内ホールでは、3日間を通じて、様々なイベントが開催されました。

中でも、9台のヴァイオリンを並べて、プロ奏者に試奏していただく演奏会は、お客様に楽器の音色をイーブンに比較していただくことができ、好評でした。

司会は、宮地楽器スタッフの荒谷さん、ヴァイオリン演奏は三ツ木摩理さん、ピアノ伴奏は山本由紀子さんです。

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9名の製作者にとっては、プレッシャーもかかる、緊張するイベントではありましたが、非常に貴重な経験ですし、こうした状況の中で得たヒントを、次の楽器に活かしていけるかどうかで、今後の製作者としての成長が問われるものだと思います。

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また、こうした企画では、異なる楽器を順番に演奏されるヴァイオリニストさんに負担がかかるものですが、三ツ木先生には、今回も快く引き受けていただいた上に、数日前から実際に試奏されて、楽器に合う弓を選定された上で曲目を決定されたりと、多くの時間を割いていただきました。

イベント前日には、製作者と直接会話しながら、さらに良い音にするための提案をいただくなど、製作者にとって非常に貴重な経験となりました。

これだけの数の楽器の音を把握して、合う弓、曲を選定するのは、本当に大変なことと思います。
あらためまして、感謝申し上げます。

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さて、これ以外にも、たくさんのイベントが企画されました。

クレモナの歴史や、ヴァイオリン製作についての説明は、伊東ラッザリ渚さん、小寺秀明さんが担当、司会は宮地楽器スタッフの鈴木さんでした。
2度の講演ともに、分かりやすい説明で好評でした。

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そして、製作者の半生や、製作家になった理由などを紹介した講演会「製作家への道」も開催されましたが、残念ながら、写真が手元にありません。
私も、坂本忍さん、高橋尚也さんとともに、製作家になった経緯などをご紹介させていただきました。
宮地楽器スタッフの三好悠さんの軽妙な司会のおかげで、楽しい時間となりました。


そして、ある意味、3日間のイベントを通じて、別の意味でのハイライトとなったのは、ヴァイオリニストの中西俊博さんを招いての、パネルディスカッションでした。
「良い楽器とは?」というテーマについて、演奏家、製作家、楽器店、それぞれの立場で意見交換する場となりました。

司会は宮地楽器店長の山本さん、製作家として、私と天野さん、根本さんが参加しました。

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短い時間でのディスカッションで扱うには難しいテーマでしたが、山本店長の的確な司会と、中西さんの懐の広い知識と見識に基づいたトークに導かれて、楽しく、また内容の濃い時間となりました。

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私自身、とても勉強になる時間を過ごさせていただくとともに、中西さんに楽器を試奏いただき、光栄な時間となりました。
貴重な機会をありがとうございました。

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という感じで、非常に内容盛りだくさんな3日間でした。
ご来場いただきましたお客様に、一同、あらためまして厚く感謝申し上げます。

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さて、このイベントから2週間後の12月16日から3日間、今度は大阪にて展示会が開催されました。

大阪、高麗橋にある岩井孝夫さんの工房にて、ニコラ・ラッザリ師匠と奥様の渚さんとともに、ヴァイオリンを展示しました。

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岩井さんと旧交の深いラッザリ師匠ですが、私と同じ時期に夫妻が大阪に遊びに行くことになり、それでは展示会を開催しようということになったのでした。
3人の関係につきましては、こちらのブログ記事でご紹介しております。
https://violino45.exblog.jp/29441782/

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3人の揃いのネクタイは、岩井さんが展示会に向けてプレゼントしてくれたものでした。
岩井さんと私の共通の趣味の、自転車がデザインされています。
渚さんのスカーフも、デザインは違いますが、岩井さんからのプレゼントでした。

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私は、宮地楽器さんで展示した3台のヴァイオリンをそのまま置かせていただきました。
2021年のヴァイオリンです。

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隣には、ラッザリ師匠の楽器が置かれ、それだけでも畏れ多くて緊張です。

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事実、今回の師匠の楽器は、その仕上がりの完成度、音についても、まだまだ私が目指す目標は遠くに存在することを実感させられる、素晴らしいヴァイオリンでした。
と同時に、良い師匠に弟子入りできて、本当に幸運だったのだと、あらためて実感もしました。

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岩井さんの最新作とともに並んだ、2011年と2005年のヴァイオリン。
25年前、日本で独学で修行中には、このような未来が来るとは想像もしていませんでしたので、とても感慨深い展示会となりました。

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年末で、しかも寒波の厳しい中でしたが、多くのお客様にご来場いただきました。

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中には、ラッザリ師匠の20年前のヴァイオリンを持参されたお客様もいました。
作品を見る師匠の目が真剣です。

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とは言え、宮地楽器さんの展示会ほどにはお客様も来ないので、時間ができると、製作者同士の雑談タイムになりますが、それも楽しい時間でした。

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ある意味、至福の時間でもありました。

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最後に、違った形での記念撮影をしようということになり、ヴァイオリンを持っての1枚です。
楽器製作を始めた時からの友人の岩井さん、そして20年前に弟子入りした師匠とともに、プライベートな展示会で御一緒できたのは感無量でした。
これを励みに、今後も精進していきたいと思っております。

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展示会も終わり、岩井さんの自宅の近所を自転車で一回りです。

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クレモナに戻ったら、4匹の猫たちが揃って迎えてくれました。

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おまけ写真です。
イタリアに戻る日、新幹線から見えた富士山はとても美しかったです。
また日本で、皆様にお目にかかれる日を楽しみにしております。

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# by violino45 | 2023-01-01 04:59 | 日記 | Comments(4)