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メリークリスマス!&ホワイト(バロック)ヴァイオリン

早いもので、2013年も残すところ一週間ほどとなりました。

私自身、振り返ってみますと、今年も、たくさんの印象的な出会いがありましたし、また、多くの皆様と楽しく交流させていただいた一年でした。
あらためて、厚く感謝申し上げます。

5月には、池袋での展示会、そして、宮地楽器さんでの楽器製作イベントを開催いただきました。
9月には、スロバキアでの製作コンクールがあり、往復2200キロの道のりを爆走したのも、思い出深い経験でした。
10月のモンドムジカ、そして11月には弦楽器フェアにて皆様と交流させていただきました。
さらに、松山では私の楽器を使用した演奏会も開催いただきました。

個人的には、7月には愛猫シマにゃんとの別れという悲しい出来事もありました。
実は、上半期の記憶は、シマにゃんの闘病生活がほとんどを占めていまして、ほぼ毎日のように獣医さんに行き、抗生物質の注射、そして点滴を受けていた頃を思い出すと、今でも胸が痛くなります。

未だに、その傷からは立ち直れていないというのが正直なところですが、ブログ上でも、たくさんの皆様から愛されたシマにゃんは、やはり幸せな猫であったと思う今日この頃です。
ありがとうございました。
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さて、今日はクリスマス・イヴということで、今年もクリスマスカードを作りましたので、ご覧下さいませ。
クリックしますと、大きな画像でご覧いただけます。
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さて、今年の夏頃、以前から製作のご依頼をいただいていたバロック・ヴァイオリンを製作していたのですが、なかなかブログで紹介する機会がありませんでした。
ですが、先日、お客様に納めることができたので、この機会に、少しご紹介させていただきます。
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バロック・ヴァイオリンの定義を一言で説明するのは難しいのですが、大きなポイントとしては、ネックの接合角度が挙げられると思います。

現代のヴァイオリンは、ネックがボディに対して6度程度の角度が付けられていますが、ストラディバリの時代は、角度がゼロで、その分、指板をクサビ状にして角度を付けていました。
その分、ネックがハイポジションで太くなり、演奏性に難がありましたが、当時は指板も短く、ハイポジションで演奏する機会も少なかったので、それでも問題はありませんでした。

上が現代のヴァイオリン、下が一般的なバロック・ヴァイオリンのネックです。
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ですが、ヴァイオリンの演奏技法が次第に高度になり、またハイポジションを頻繁に使う曲が増えてきたことと、より大きな音が出る楽器が求められる時代となり、ネックそのものに角度を付ける改造が必要になり、現代のヴァイオリンのような構造が確立したのですが、その変化はいきなり訪れたわけではなく、長い年月をかけて、少しずつ試行錯誤されていったのでした。

バロック・ヴァイオリンを製作するにあたり、どの時代の様式で製作するかが重要な事項になるのですが、今回は、お客様のご要望もあり、ちょうど中間的な時代、つまり試行錯誤を経ながら少しずつ角度が付けられていった時期、バロック・ヴァイオリンとモダン・ヴァイオリンのちょうど中間的な構造を持つ楽器として設計することとなりました。

この点に関しては、モダン的な演奏性も満足させつつ、見た目はバロックらしい雰囲気を残すために、今回、最大限に悩んだ部分でしたが、何度か図面を書いては消し、最終的には以下の写真のようなネックに仕上がりました。
また、バロック時代のネックは、釘で固定されていましたが、この部分も、試行錯誤の歴史の中で改善されていった経緯がありますので、今回は、現代の手法である、組み込みで仕上げました。
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この結果が、学術的な意味での「バロック・ヴァイオリン」と言えるのかどうかは定かではありませんが、見た目、演奏性の両面に関して、ある程度のバランスは取れたと思っています。

また、指板ですが、本来は、モミの木などの軽い木材に薄い黒檀を貼り付けるのがバロックの様式ですが、それでは、モダン的なハイポジションの演奏に対しての強度が保てないと判断し、通常の黒檀の指板を使い、周りを額縁のように白い木材で囲む方式で、見た目と性能のバランスを保ちました。
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また、バロックの時代の弦は裸ガット弦でしたので、表板へのテンションも弱く、現代のような太く長いバスバーは必要ありませんでした。
バスバーも、ネックの改良の歴史とともに、少しずつ長く、太くなっていったものと思われます。
今回は、普段の私のバスバーよりも、少しだけ短く、細くしました。
普段の私のバスバーは、かなり太く強いものですので、もしかしたら、今回のバスバーぐらいで、丁度一般的な大きさなのかもしれません。
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裸ガット弦の仕様なので、表板を普段より薄く削って、バスバーも極限まで細くすれば、より鳴りやすくなるのは想像できるのですが、楽器としての強度を優先して、ほぼ普段通りのボディの楽器となりました。
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その他の部分は、現代の楽器と変わりなく製作しています。
写真で少しご紹介します。
エフ孔です。
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駒も、悩んだのですが、バロックスタイルのものを使ってみました。
このあたり、音作りに密接に絡んでくるわけですが、初めての経験なので、全ては試行錯誤です。
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ホワイトの段階では、まだ駒は綺麗に仕上げず、削りシロを残してあります。
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裏板は、スタンダードな2枚板、また、少し幅広なトラ杢の材料を使いました。
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コーナー部分のパーフリングは、いつも、神経を使うところです。
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ウズマキは、当時の、新作だった頃のストラディバリのイメージで、少しシャープな感じを目指したのですが、できあがってみたら、あまり変わりないかもです、、。
ちなみに、↑のクリスマスカードのウズマキは、この楽器のものです。
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長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ニス塗り後の完成した楽器は、年が明けてからご紹介させていただきます。
みなさま、良いクリスマスを、そして、心穏やかな年末年始をお過ごしくださいませ。
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by violino45 | 2013-12-24 05:40 | 製作記 | Comments(11)

動画でのご紹介/「松山での演奏会」

前回ご紹介いたしました松山での演奏会の様子を、一部ではありますが、動画でご覧下さいませ。

演奏家さんにとって、弾き慣れた楽器から持ち替えての新作楽器での演奏は、とても大変なことだと思いますが、そのような状況の中、すばらしい演奏を聴かせていただきました。

また、製作家にとっては、こうした形で演奏会を開催いただけるのは、至上の幸福であるわけですが、それと同時に、自分の楽器のせいで素晴らしい演奏に水を差してしまわないか、とても心配な状況でもあるのです。

なので、今回の演奏会の主旨とは矛盾してしまうかもしれませんが、会場のお客様が、楽器の作者などを意識せずに純粋に音楽を楽しんでいただけたのなら、それが私としても一番嬉しいことだと思いながら、会場で聴かせていただきました。

そんな製作者の心情を、動画をご覧いただきながら、少しでも共有していただければ嬉しいです。

まずは、モーツァルト作曲、「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K.364」 より第2楽章 です。
演奏は、ヴァイオリン:原瀬万梨子さん、ヴィオラ:西村壮さん、ピアノ:西村真也さんです。



ヴィオラは、昨年9月に行われたトリエンナーレ・コンクール(クレモナ)にて5位に入賞した楽器です。
ヴァイオリンは、今年9月に行われたスロヴァキアでの製作コンクールにて3位を受賞した楽器ですが、このヴァイオリンは、昨年のトリエンナーレにも参加していますので、同じコンクールに参加した兄弟楽器での共演となりました。

続いて、モーツァルト作曲、「ヴァイオリンとヴィオラのためのデュオ K.424」 より第1楽章 です。
使用楽器は、前曲と同じです。
無伴奏なので、より楽器の音が分かりやすいかと思います。



最後に、マスネ作曲、「タイスの瞑想曲 」(2台のヴァイオリンのための編曲) です。
原瀬さんの使用楽器は前曲と同じですが、西村壮さんのヴァイオリンは、2009年に製作した楽器で、現在、西村さんご本人にご愛用いただいているものです。



ご覧いただき、ありがとうございました。
これからも、美しい音楽を奏でていただけるように、良い楽器を製作していきたいと、あらためて思った演奏会でした。

主催いただいた皆様、演奏家の皆様に、あらためて感謝申し上げます。
ありがとうございました。

by violino45 | 2013-12-12 06:46 | 動画 | Comments(2)