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スロバキアでの製作コンクールのご報告(長文です)

追記2
コンクールの公式サイトにて、楽器の外観審査風景の写真が紹介されています。
審査員の皆様の、真剣な表情をご覧下さい。
なぜか、私の楽器を審査中の写真が多いです。
http://www.violinoarvenzis.eu/gallery/a2013/

あと、Resultsのページでは、最終順位とともに、一次審査(外観)、2次審査(ソロ演奏)、3次審査(ピアノ伴奏)の終了時点の順位もご覧いただけます。
外観審査と音響審査で、微妙に順位が入れ替わっていく様子が垣間見られて、興味深いです。
3次のピアノ伴奏審査までは、私の楽器も頑張っていたようで、あらためて、楽器にお疲れ様と言ってあげたいです。
http://www.violinoarvenzis.eu/result/


追記1
第1位になりました高橋明さんも、ブログにてコンクールの様子をご報告されています。
http://akiravln.exblog.jp/20748547/
私とは少し違う切り口でご紹介されていますので、ぜひご覧ください。


事前にお知らせする余裕も無く、失礼しておりましたが、9月13日~15日、スロバキアのDOLNY KUBIN という町でヴァイオリン製作コンクール「第5回 Violino Arvenzis」が開催されました。

私はヴァイオリンを1台、高橋明さんはヴァイオリンを2台、それぞれ出品しました。

結果は、高橋明さんが「第1位・ゴールドメダル」を受賞、そして2台目は「第5位」に入賞しました。

私は、「第3位・ブロンズメダル」を受賞しました。
そして、外観審査で最高点を得た楽器への「最優秀技術賞」、さらに、イタリア弦楽器製作者協会(ALI)から、「ベスト・クラフツマンシップ賞」もいただきました。
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前回2011年の同コンクールでは2位だった明さん、初優勝おめでとうございます!
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審査委員長であるシメオネ・モラッシーさんと壇上で握手できるのは、やはり最高に感激します。
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私も嬉しそうですが、シメオネさんにもとても喜んでいただけました。
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2位・シルバーメダルを受賞されたのは、ポーランドから参加された、タデウスさんです。
大きな製作コンクールの審査員も務めるほどの大ベテランで、私が2006年に優勝したヴィエニアフスキーコンクールでも審査員をされていました。
でも、その地位に安住すること無く、常にコンクールに挑戦されていまして、その姿勢には私達も大きな尊敬の念を持ち続けています。
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さて、この「Violino Arvenzis」というコンクール、今までも常に参加していましたが、11位から6位の間の成績で留まり、なかなか上位入賞はできずにいました。
原因はもちろん私の未熟さなのですが、このコンクールのコンセプトが、他の国際コンクールと少し違っていて、楽器の外観よりも音質を重視しているのも一つの要因でした。

点数配分では、外観が25%、音質が75%です。

私自身、製作ポリシーとして、昨年のテレビ番組でも発言していますが、新しく誕生したばかりの楽器が最初から古い楽器のように鳴るようなことを求めず、最初は生まれたての元気な声が出て、長い年月をかけて成長して初めて本物の響きで鳴ることを理想としていますので、新作にもかかわらず音質重視のコンクールはハードルが高かったのは事実でした。
ですが、その分、挑戦のし甲斐もありました。

今回の楽器も、製作して一年以上経った楽器とはいえ、まだまだ若い声ですし、コンクールに参加はしたものの、ハードルの高さには変わりが無いものと想像していました。

ですので、3位という成績はとても嬉しく感じられています。
こちらが賞状です。
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そして、3位という成績よりもさらに嬉しいのが、最優秀技術賞、そして、ベスト・クラフツマンシップ賞でした。
特に、ベスト・クラフツマンシップ賞は、イタリア弦楽器製作者協会(ALI)からの受賞ですので、自分がこの12年間目指して精進してきたイタリアスタイルの楽器が、コンクールの場で正式に認められたということですので、その喜びは大きいのです。
こちらが、最優秀技術賞の賞状、そして、ベスト・クラフツマンシップ賞のプレートです。
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銀メッキの、手作りのプレートです。
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さて、舞い上がってしまって自画自賛ばかりで失礼しましたが、私自身、同じ工房で仕事をする相棒の受賞を何よりも喜んでいます。
コンクールに参加するたびに、どちらかの順位が上回るのは当然ですが、そのたびに、お互いに奮起して、また、日頃の製作の中でも、ある時は切磋琢磨、ある時は情報交換などをしながら、お互いに腕を磨いてきたことが、こうして同じ舞台で表彰を受けられることにつながってきたと思います。
高橋さんの受賞楽器は、こちらです。
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表彰直後も、シメオネさんから、いろいろ指摘を受けながら問題点を探っていく姿勢はさすがです。
私も、さらに精進したいと思いました。
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もちろん、いつも私の背中を押し続けてくれる(ときどき突き飛ばす)、ベストパートナーの存在があって、初めてこの場に居られるのだと思います。
今回も、感謝の気持ちとともに、喜びを分かち合うことができました。
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今回、クレモナでの製作仲間のマルコ・オジオさんが審査員のひとりでした。(右端)
表彰式も終わり、皆で記念撮影です。
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今回、同じクレモナから参加した若手日本人製作家も、ファイナリストには残れませんでしたが、健闘しました。
西村翔太郎さんが、8位。
輪野光星さんが、10位でした。
おめでとうございました。
将来、強力なライバルになりそうですね。

さて、実は今回、表彰式に行くことは予想していなかったのですが、最終日の前夜、現地から連絡がありまして、「6人のファイナリストに残っているので、スロバキアまで来ませんか?」とのことでした。

クレモナからスロバキアまでは1100キロの道のりです。
午前11時からの最終審査(オーケストラ伴奏)を聴くためには、翌日の飛行機では間に合わないため、急遽、車で行くことになりました。

計算では、23時に出発すれば、ギリギリ間に合うはずと思い、大急ぎで準備をしての出発となりました。

途中、もう間に合わないかと思いましたが、プロドライバー並の私の奥さんの運転テクニックで(暴走?)、最終審査の途中に会場に入ることができました。
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会場に入ると、まさしく私の楽器が演奏されている途中でした。
表示はされていなかったのですが、そう感じたのは、ニスの色もそうでしたが、やはり、若い楽器がオーケストラの演奏に押されて、少し苦しげに鳴っているように感じたからです。(音量は、十分に出ていましたが)
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徹夜明けの、朦朧とした意識の中でしたが、非常に貴重な体験をすることができました。
無理をしてでも来た甲斐がありました。
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審査が終わり、放心状態で記念撮影です。
この巨大な糸巻きのモニュメント、、、この小さな町がバイオリンにゆかりのある土地だと感じさせてくれます。
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こちらは、参加した楽器の展示です。
あまりゆっくりと見られませんでしたが、どれも綺麗な楽器でした。
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私の楽器はこちらです。おつかれさま。
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表彰式の翌日、まったく観光もせずに帰るのはさすがに寂しいので、会場の近くの町にある古城を見学しました。
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何百年もの歴史を感じさせる建物の存在感は、やはりすごいです。
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小さな町を、当時の領主が守り続けていた歴史を想像してしまいます。
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ちなみに、以前、ドラキュラの映画の撮影でこの城が使われたそうで、こんなモニュメントもありました。
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ヨーロッパの小さな町は、やはりかわいいですよね。
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町を歩いていると、どこからか、猫が近寄ってきました。
見ると、シマにゃんに良く似ている猫ちゃんでした。
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シマにゃんが、この猫ちゃんに乗り移って、お祝いを言いに来てくれたのかなと、ふと思いました。
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私自身、今回のコンクールに参加して、勉強すべき点をあらたに発見することができ、良い経験になりました。
クレモナに戻って、さっそく、シメオネさんに会いに行き、いろいろとアドバイスをいただくことができました。
こういう時にしか聞くことができない意見というのもあるので、そういう意味でも、コンクールに参加し続けることは重要だと思っています。
タデウス先輩のように、いつも挑戦し続けたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

最後に、今回のヴァイオリンの写真をご覧ください。
昨年のトリエンナーレ・コンクールにも出品したヴァイオリンですし、弦楽器フェアや池袋の展示会でも展示した楽器ですので、直接ご覧になった方も多い楽器だと思います。

長文を最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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by violino45 | 2013-09-18 01:23 | 日記 | Comments(30)

ストラディバリモデル、そして岩井さん制作の動画の紹介

残暑お見舞い申し上げます。

クレモナは、今年は珍しく残暑が厳しいですが、それでも、30度を超える日はなくなりました。

私がクレモナに来たのは、12年前の、2001年9月3日でした。
そして、その一週間後にニューヨークで事件が起こり、まだテレビも購入していない時でしたので、友人の家で衝撃的な映像を見ることになりました。

希望に燃えてクレモナに来たのに、いきなり、暗い気持ちで留学生活が始まったことを覚えています。

さらに、その年は、9月だというのに肌寒く、テレビを買う前に、電気毛布を買ったのでした。

その頃、40歳だった私は、12年もクレモナに居ることは想像もできず、不安な気持ちと戦いながら、それでも、必死な思いで製作学校に通っていたことを思い出します。

12年経った今も、いろいろ大変なことも多く、弱気になることもありますが、2001年当時の気持ちを思い出すことで、まだまだ乗り切れる気がしています。
やはり、初心忘れるべからず、ですね。

と言いつつ、このブログは、2005年に開始した時の勢いはどこへやら、、、名ばかりの製作記になりつつありまして、申し訳ありません。

でも、私の製作家としての歴史と、大切な出会いの数々が凝縮された、私の分身のようなブログですので、今後も、途絶えることなく継続していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

前置きが長くなりましたが、現在製作中の楽器について、少しご紹介します。
いくつかの楽器を同時進行しているのですが、今回は、ストラディバリモデルの製作記です。
この楽器は、11月の弦楽器フェアにて展示させていただく予定です。

荒削り、無心で削っているように見えて、実は、もっとも脳内が活動している作業かもしれません。
荒削りが気持ちよく決まった時は、その後の作業のスピードが大きく違ってきますので。
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パーフリングの先端部ですが、カッコ良く決めようと思うと、どうも余分な力が入って上手くいきません。
こういう部分は、無心で臨んだ方が良いのかもしれません。
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そして、ミニカンナでのアーチ削りです。
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これは、毎回、戦いというか、自問自答の連続になります。
途絶えることのない連続したカーブ、、、三次元の世界なのですが、四次元に迷い込んだような気持ちにもなります。
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迷い込んだら、気持ちをリフレッシュ、ということで、タイトルにも書きましたが、友人の製作家、岩井孝夫さんが製作された動画をご紹介します。

「カエデの芽吹き」という動画です。

今回の記事でご紹介したバイオリンの裏板は、旧ユーゴスラビア諸国が位置するバルカン半島の山で育つ、通称「バルカンカエデ」と呼ばれるカエデで、見た目も美しく、音響的にも優れています。

ご紹介する動画は、この、バルカンカエデと同じ種類の樹木が、春になって芽吹く様子を連続撮影した写真をつなげたもので、貴重な映像ですし、生命の力強さを感じて、そして癒やされる動画になっています。

そして、私達製作家は、このような芽吹きを何百年も繰り返してきた樹木を削って楽器を製作しているのだということを忘れてはいけないと、あらためて思いました。

では、ごゆっくりご覧くださいませ。


by violino45 | 2013-09-06 07:30 | 製作記 | Comments(12)