シマにゃんの物語。
(拙文の上に、記録の意味もありますので、意味も無く長い文章になっています。)
(また,少々つらい写真もあえて載せています。ご了承ください。)
私たち夫婦が住んでいる自宅アパートの敷地内には、ネコがいつも何匹か居ます。
その中に、シマ模様が印象的な、シマにゃんがいました。
シマにゃんは、7年ほど前に、このアパートの「ネコおばさん」のガレージで生まれて、基本的には野良なのですが、毎日、ネコおばさんが餌と水をガレージであげていました。
とてもかわいくて人懐っこくて、駐車場を歩いていると近寄ってきて、スリスリ、、スリスリ、、すりすり。
得意技は、スリスリしながらその場で風車のように回転を始める「クルクル」と、突然横に倒れて、お腹を撫でて!の要求をする、「ゴロン」です。
7年前というと、私がクレモナのバイオリン製作学校を卒業する直前の頃で、いろいろなストレスが溜まっていたころですが、この、シマにゃんをはじめとして、アパートに住んでいるネコちゃんたちには、いつも癒されていました。
ところが、しばらく前から、シマにゃんの耳の中が黒く変色してきたことに、我が家のネコおばさん(失礼)が気づきました。
そして、少し異臭も。
耳ダニかな?と思いつつ、でも、本家のネコおばさんが面倒を見ている手前、勝手に獣医さんに連れていくわけにもいかず、しばらく様子を見ていました。
そうこうするうちに冬になりました。
我が家のガレージには段ボールで作ったネコハウスがあるのですが、シマにゃんが一日中そこで寝ていることに気がつきました。
最初は、ネコハウスを気に入ってくれたのだと思ったのですが、2日目になっても、餌を食べに出た形跡もなく、近寄っても出てこないし、異臭もひどくなってきました。
3日目に、さすがにこれはおかしいということで、ネコハウスごと明るい場所に出してみたら、右の耳が完全に黒く塞がっていて、顔が腫れて変形して、ひどい脱水症状の状態で、倒れていました。
そして、すごい腐敗臭、、、まるで、生きたまま朽ち果てていく途中のような、ひどい状態でした。
そのまま車に乗せて獣医さんに直行しました。
獣医さんは、シマにゃんのあまりのひどい様子に、ビックリしながらも診察してくれました。
そして、耳の中のものは腫瘍で、喉にも転移して大きく腫れているので、ものを食べられないこと、つまり、手遅れの状態であるとの説明でした。
ただ、万が一、抗生物質の投与で、腫瘍が小さくなったら、手術で切除できるかもしれないとのことでした。
いずれにしても、ネコおばさんには無断で連れてきてしまいましたが、こうなったら我が家で看病するしかありませんので、その日は、皮下点滴で水分を補給して、強力な抗生物質を注射してもらって、帰宅しました。
(最初の状態は、あまりのことに写真を撮る気になれず、、映像は残っていませんです。)
その日は、自宅で、ネコハウスに入れて様子を見ましたが、餌は少しだけ食べたけれど、喉を通らないので苦しそうで、水はまったく飲まず、グッタリとしていました。
最初は、耳の中が真っ黒で何も見えませんでしたが、掃除をしたら、患部が見えるようになりました。
完全に塞がってしまっています。
2日目は、やはりほとんど動かずでしたが、驚いたことに、トイレの時だけは立ち上がって、砂箱にきちんと済ませました。
なんと良い子。。。
でも、顔がはれて、苦しそうです。

3日目の朝、息が苦しそうになって、咳もし始めました。
喉にできた腫瘍のせいで、呼吸が困難のようです。
再び脱水症状になってきたこともあり、獣医さんへ。
皮下点滴と抗生物質注射。

獣医さんによると、このまま腫瘍が大きくなったら、いつかは呼吸困難で苦しみ始めるので、その場合は、安楽死も考える必要があると言われました。
安楽死は避けたいと思いましたが、目の前で窒息して苦しんでいるのを見て、そのままでいられるかどうか自信はなく、、覚悟も必要かと思いました。
この日から、強力な抗生物質の副作用なのか、よく分かりませんが、意識がほとんど無くなり、夢遊病のようにフラフラと歩き回るようになりました。
周りの動くものにまったく反応しなくなり、表情も無く、でも、いろいろな場所に行っては暗がりに隠れたり、ネコの本能のままに歩き回っているような感じでした。

また、眠り方も、ネコらしさが消えて、うずくまるような感じになってきました。
いわゆる、ネコがよくやる、箱座りとはちょっと違っていて、苦しそうな感じです。
獣医さんによると、ネコはこういう眠り方になると、かなり体調が悪いそうです。

眠るときも目が閉じなくなり、瞬膜?が出たままになって、なんとも怖い顔になってしまい、かつての、美人ネコの面影がどこかに行ってしまったのは悲しかったですが、それよりも、餌も水もまったく取らないし、呼吸もだんだん苦しくなってきて、ほんとうに、この数日で命が危ないのではないかと思いました。

とりあえず、注射器で、水と、ネコミルクを口から与えてみたら、抵抗しながらも飲んだので、抗生物質の錠剤も水に溶かして投与することにしました。
そのまま、数日間はこうして毎日数回、注射器で水分とミルク、抗生物質を投与する日が続きましたが、これだけで栄養が足りるわけもなく、徐々に痩せていくのが目に見えましたが、でも、ひたすら歩き回るのはやめようとせず、その足取りもフラツキ始めて倒れることが多くなり、これはいよいよ危ないかと感じ始めました。
でも、耳の中を良く観察してみると、最初に比べると、少し腫瘍が小さくなっているような気がしました。
のどの腫れも少し引いてきて、呼吸もあまり苦しそうではなくなりました。
これは、もしかすると?と希望の火も見えた気もしましたが、目の前のシマにゃんの状態を見ると、回復に向かうとはとても思えない状態でした。

拾って10日ほど過ぎた頃、耳から大量に膿みが出てくるようになって、(抗生物質が効いているのだと思います)また、頭の上のコブのような物が大きくなってきている事に気がついて、触ってみると、なんだかブヨブヨしているので、もしかしたら膿みかもしれないと、獣医さんに連れていくと、太い注射器で頭から直接吸い出されました。
でも、完全には取りきれないようで、まだコブは残っていました。
でも、膿みが減ったことで、脳の圧迫が減ったのか、、少し様子が違ってきました。
少しだけ、動くものに反応するようになったのと、瞬膜が小さくなってきました。
2、3日、小康状態が続きましたが、ある時、獣医さんが頭に注射器を差した穴から、膿みが出ているのを発見。
少し押してみたら、大量の膿みが出るわ出るわで、、頭にどれだけ膿みが溜まっていたのか、、、
とりあえず、出せる膿みは全部絞り出したのですが、それからしばらくして、大きな変化が、、。
突然、目覚めたのです、、シマにゃん。
「ここはどこ?私はだれ?」状態です。

急にキョロキョロ、周りが気になりだしたようです。
でも、まだ半分夢の中のようで、すぐに夢遊病状態にもどったり、突然我に帰ったり、、。
試しに餌をあげてみたら、匂いをかいで、食べ始めました。
これは、感動しました。
まさか、ふたたび自分で餌を食べることができるようになるとは、以前の様子からは、想像もできませんでしたので。。

こうなると、とうぜん、元通りに元気になるのでは?という期待が生まれますが、、、
シマにゃんの試練の日々は、実はここから始まるのでした。
目が覚めた翌日、獣医さんに連れて行くと、その回復の様子に、驚かれたようです。
腫瘍は悪性ではなくて、ポリープかもしれない、ということになり、内視鏡で見てみると、耳の奥の方に、たくさん、キノコみたいにポリープが生えているそうです。
早速、切除開始です。。
でも、このくらいのオペでは、麻酔は使わないようで、、、。
小さいポリープを、ブチッと切り取るたびに、、「ウギャー!」という、化けネコのような叫び声が響いて、、、
そりゃ、痛いですよね、、。
シマにゃんを押さえつけている、私の方が大汗で、、見てられませんでした。
でも、シマにゃんの偉いところは、どれだけ痛い思いをしても、逃げようとはしますが、爪でひっかいたり、噛み付いたりしないことでした。
これには、私、惚れました。
3~4個のポリープを取ったところで、今日はこれまでで、次はまた次回、、、
結局、反対側の耳にもポリープがある事が分かり、計4回、獣医さんに通って、痛い思いをしました。
一応、目立つポリープは取ったので、しばらくは、様子を見ようということになり、とりあえず、病院通いは終了しました。(良かった、、)
まだまだ完全には治っていないとは思いますが、でも、最初に拾った時の状態から見れば、信じられないくらいに回復したと思います。

ただ、シマにゃん、、夢遊病状態で生死の境をさまよっていた時のことは、まったく覚えていないようです。(当然ですが)
そのころは、抱っこしても平気でしたし、膝の上でも眠っていましたが、覚醒したとたん、私たちの顔を見ると、逃げてしまうようにもなりました。(ある程度は予想はしていましたが、これは悲しいですよね~)
でも、気が付いたらまったく知らない場所で、知らない人に取り囲まれて、しかも、4回も痛い思いをさせられてですから、、、仕方がないですよね。
でも、記憶のスイッチは、入ったり切れたりするようで、、、リラックスして落ち着いているかと思えば、急にビックリして逃げ出したり、変化を繰り返すようにもなりましたが、その感覚が、序所に長くなり、リラックスモードの方が多くなってきました。

リラックスしている時は、得意技の、スリスリ、クルクル、ゴロン、もするようになってきて、少しずつ、新居にも慣れてきているのかもしれません。

シマにゃんはヒモが好きで、ヒモでジャラしてあげると、ものすごいスピードで完璧なフットワークで追いかけることができるようにもなりました。
少しの段差につまづいて、よろけて倒れていた頃から思うと、その回復力はさすがだと感じます。

覚醒したころ、ネコおばさんの部屋にシマにゃんを連れていったら、涙を見せて喜んでくれました。
餌を食べに来なくなってしばらく経つので、もうどこかで死んでいると思っていたそうです。
ネコおばさんは、これから家族の看病で忙しくなるので、ガレージネコの面倒は見られないとのことで、私たちによろしくと言っていました。
シマにゃんが、名実共に、私たちの家族になった瞬間でした。

今は、シマにゃん、耳の中にできたカサブタが痒そうですが、それ以外は、普通に生活しています。
このまま、ポリープが完全に無くなってくれるのか、、それはまだ分かりませんが、とりあえずは健康な状態に戻ったので、しばらくは様子を見ていこうと思っています。

シマにゃんが、以前暮らしていた駐車場のことを覚えているのかどうか、分かりませんし、今の暮らしを喜んでいるのかも、その表情からはよく分かりません。
まだまだ、時々、警戒モードになってしまいますし、心の底からリラックスしてくれるまでには時間もかかると思いますが、でも、あの日、助けていなければ、おそらくもうこの世にはいなかったと思いますので、シマにゃんが、ご飯をたくさん食べて、安心して丸くなって眠ってくれれば、やはり、これで良かったのだと思います。
私が、製作家になれるかどうか不安で、苦しんでいたころ、駐車場で気持ちを癒してくれたことには本当に感謝していますので、これで、少しだけ恩返しができた気がしています。
前回の記事で紹介したシマにゃんの写真の、少し複雑な表情の理由が、これでお分かりいただけたかと思います。
足の先の、茶色く染みのようになっているのは、血や膿みがこびりついて取れなくなっているのでした。。

最近は、呼んだら小走りで近づいてくるようにもなりました。
本当に心を許せる家族になってくれるのも、そう遠い日ではないかもしれません。

また、シマにゃんに変化があったら、ご紹介しますね。。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。