トリエンナーレ・コンクールの参加報告

3年が過ぎるのは早いもので、クレモナでの弦楽器製作コンクール、「トリエンナーレ 2018」が開催され、私も参加いたしました。

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ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4部門での審査となりました。
各部門の上位入賞者は、コンクール事務局のHPにてご覧いただければ幸いです。
https://www.museodelviolino.org/en/concorso-triennale-2018/


今回は、ヴァイオリン部門について、私自身が参加した所感などを簡単にご報告させていただきます。

このコンクールの正式名称は、
「Concorso Triennale Internazionale di Liuteria Antonio Stradivari」となります。
直訳すると、「アントニオ・ストラディバリ、 3年に一度の国際弦楽器製作コンクール」という感じでしょうか。

ヴァイオリンの聖地クレモナで開催される、しかも「ストラディバリ」の名を冠したコンクールということで、規模、そして注目度の面でも、やはり世界最大のコンクールですし、参加台数の多さがそれを物語っています。
今回は、ヴァイオリンだけで180台程度の参加台数だったと伺っています。

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この180台の中から、メダリストとして選ばれるのは3台だけ、という過酷さを覚悟の上で、世界各国から楽器が集まってきます。

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ヴァイオリン部門でゴールドメダルを受賞した楽器はこちらです。
フランス人のNICOLAS BONETさんで、ミラノの製作学校の卒業生です。
雰囲気のある、良い楽器でした。
おめでとうございます。
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そして、シルバーメダルを受賞したのは、日本の三苫由木子(みとまゆきこ)さんです。
三苫さんは、2006年のヴィエニアフスキー・コンクールでもファイナリスト、そして最優秀ニス賞を受賞された実力派の女性製作家で、クレモナにも定期的に勉強に来られている研究熱心な方です。
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こちらが三苫さんのヴァイオリンです。
今回の作品は、楽器の外観の美しさとともに、特に、音の良さを評価されての受賞だったそうです。
おめでとうございます。

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さて、私自身のヴァイオリンですが、、
順位的には22位となり、上位入賞とはなりませんでしたが、順位そのものには十分満足というか、予想以上に高い評価をいただいたと実感しています。

と言いますのも、180台の参加楽器のうち、50台以上は誰でも一度は名前を聞いたことがある一流の製作家の作品で、それだけでも畏れ多いですが、さらに、最近のコンクールで常に上位入賞している製作家が私の前後に並んでいる光景を見ると、あらためて、過酷なコンクールだったという実感が正直なところです。

こちらが、私のヴァイオリンです。
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コンクールには、もちろん、キャリアアップという大きな目標があって、皆、より良い成績を目指して参加するのですが、メダルを獲得できるのは3人だけですので、残りの177人は皆、残念な思いをするわけです。
なので、順位そのもの以外にコンクールに参加する意義を明確にしておかないと、参加するために費やした労力が無駄になってしまいます。

私の場合、このブログでも過去に書いてきたことですが、普段通りお客様に納品するつもりで完成した作品が、コンクールでどのような評価を受けるのかを分析して、その後の作品に活かすということが、コンクール参加の意義だと考えています。

具体的には、楽器が完成した時点で、外観、音について自己採点しますが、結果が出たら、項目別に細かく得点を分析して、今の自分に足りないものを冷静に判断することで、より普遍的な意味での良い楽器を目指していくアプローチになります。

今回の採点結果を見ると、自分ではあまり自信の無かった項目で高得点だったり、その逆もあったりで、なかなか興味深い結果となりました。

今までもブログで書いていますが、製作家にとって、お客様に楽器をお渡しする時が最大の勝負で、一番緊張する瞬間でもあります。
その時に残念な思いをしないためにも、コンクールの順位に一喜一憂するのではなく、本質的な部分を冷静に分析していければと思っています。


審査が終わった楽器が展示されているのを見ると、いつも、愛おしい気持ちになります。
今回も、よく頑張ってくれました。。
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同僚の高橋明さんの楽器です、ヴァイオリン部門で12位という成績を納められました。

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もう一息でファイナリストだったと思うと、やはり残念ではありますが、クレモナに来て17年以上、良きライバルとして切磋琢磨してきた二人の楽器が、そこそこの成績で評価された事実は、安堵とともに、やはり嬉しい気持ちではあります。
お疲れ様でした。

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さて、同じタイミングで楽器を提出した根本和音君も、初参加ながら、十分に良い評価を得られたようで、なによりでした。
チェロ部門では、根本君の工房の同僚である、同年代の韓国人のGAWANG JUNG さんがゴールドメダルを受賞されました。
クレモナでも、着実に若い世代の製作家が成長していますし、良きライバルを得た彼らの今後の活躍を楽しみに思っています。
まだまだ私達も負けられませんけれどね^^。

高橋明さん、根本和音さんとともに、楽器を提出した時の写真です。
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さて、今回コンクールに参加しましたヴァイオリンは、11月の2日~4日に開催されます、「弦楽器フェア2018」にて展示させていただきます。
ぜひ、この機会にご覧いただければ嬉しいです。

以下、写真にて、ご紹介させていただきます。
いつもどおりの、ストラディバリ、1705年モデルです。
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比較的ワイルドなトラ杢の1枚板です。

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コーナー部分の造形と仕上げは、モデルの特長、製作者の技術、オリジナリティが色濃く出る部分で、言うまでもなくコンクールでの採点でも重要になる部分です。

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表板側のコーナー部分とともに、エフの造形、精密度、美しさなども、コンクールでの得点に大きく関わる部分です。

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そして、ウズマキに関しては、音にはまったく関係のない箇所ではありますが、製作者の技量はもちろん、経験、流派、楽器に対する考え方などが色濃く反映される部分です。

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11月に弦楽器フェアでお披露目させていただきます。
会場にてお待ちしております。
長文をご覧いただき、ありがとうございました。

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by violino45 | 2018-10-02 15:48 | 製作記 | Comments(4)
Commented by parnassus at 2018-10-02 22:51
22位!ゴールドメダルでなくて、残念!と言いたい気もしましたが、
猛者ばかり揃う200人近くの過酷な中で、これはたいへんな成績でありますね。おめでとうございました!!
三苫さんももちろんですが、高橋さんも、すごかったですね~。日本人として、という意識は間違っているのかもしれませんが、誇らしい思いがしましたです。
このワイルドな裏板の楽器、弦楽器フェアで拝見できるの楽しみ!また、今度、自己採点とコンクールの採点結果と異なる部分などをぜひ教えてくださいね。
お疲れ様でした、しばし帰国までごゆっくり・・(とできますか?)
*たにつち*
Commented by 菊田 at 2018-10-03 02:48 x
たにつちさん、こんにちは。
温かいお言葉をありがとうございました。

そうですね~、もう少し残念な気持ちを持たないと、次へのチャレンジの動機が弱くなってしまうのですが、前回のメダリストや、有名なマエストロの楽器がずっと低い順位に居て、でも、とても良い楽器ばかりですので、22位で残念に思っている場合ではないな~というのが正直な実感です。

そして、もちろん、同郷の仲間として、日本人の活躍は私も誇らしく思っております。
ストラディバリさんも、まさか、300年後に、ここまで東洋人がヴァイオリン製作で活躍することになるとは思っていなかったでしょうね。。

さらに、日本人に限らず、若い世代が着実に力をつけてきているのが実感できて、脅威を感じるとともに、嬉しく思っています。

ですが、私自身も、経験年数で言えば、まだまだ若い世代ではありますので^^、簡単には道を譲らず、これからも競い合っていきたいと思います。

弦楽器フェアにて、ぜひ楽器をご覧いただければ嬉しいです。
まだ、帰国までに完成させなければならない楽器がありますので、、ゆっくりとはできないのですが、コンクールで得た経験を活かして、良い楽器を目指して仕上げていきたいと思っております。
Commented by Junjun at 2018-10-03 06:46 x
菊田さん、こんにちは。

トリエンナーレご報告有難うございます。
正式な名称や、ご説明がとても分かりやすく
大変なコンクールだと、改めて知る事が出来ました。上位になられたとの事、おめでとうございます。

私ごとですが、明日は出発ですが、半年練習はしてきたつもりですが、上手く弾けなく、、ここ数日 色々考えていました。 音楽を楽しむ事は大切だし素敵な事です。それに気づいたのが数年前、しかし今はそれだけでなく、今までに一番
バイオリンを上手くなりたいと、強く感じて
います。 。しかし、それに囚われ過ぎて、なにか 気持ちの方向がバラバラになっているような、、

菊田さんのブレないお考え、、ひとつの結果に、一喜一憂しないで、コンクールに楽器を提出する意義など、、拝読しまして とても心に響きました。私にとって、ナイスタイミングでした。

クレモナにいける、、、このチャンスを
今後の生き方に、どう反映していくか、
今の結果に全ての重点を、おくのではなく、、を目標にしていきたいと思います。
もっと、シンプルに考えないと、折角の夢のような時間の意義がちゃんと咀嚼しないまま飲み込むことになりますね。。。
( 勿論、今は今で頑張ります!)


お忙しい中と存じますが、
お体には十分 ご自愛くださいませ。
Commented by 菊田 at 2018-10-03 15:12 x
Junjunさん、こんにちは。

いよいよ明日出発なのですね、クレモナでお会いできるのを楽しみにしております!

コンクールの記事が、クレモナ演奏旅行への出発前に、何かのヒントになったのでしたら私も嬉しいです。

私自身も、コンクールに楽器を提出する前は、もちろん、いろいろ考えますし、邪念のようなものも浮かんでくることも多いです^^。

コンクールの順位は、やはり重要と言えば重要ですし、展示会では、何百人もの専門家が楽器を見て、別の次元で楽器のレベルを評価されたりしますので、恥ずかしい楽器を世に出したくないという思いも自然に湧いてきます。。

ですが、製作家として一番大切なことは、その楽器を所有された方が、心から楽しんで演奏していただけるか?という一点に尽きますので、得点や順位などの評価は、そのための貴重な栄養素として、良い形で吸収したいと思っています。

Junjunさんが、今、一番ヴァイオリンを上手くなりたいと感じておられる事はすばらしいと思います。
その思いは、時には目標そのものにもなりますし、時には、貴重な栄養素にもなるのではと想像しております。

私にとってのコンクールもそうですが、目標と栄養素が入れ替わりつつも、どちらも大切にして、その瞬間瞬間を大切にすることが、やはり重要なことではないかと思っております。

クレモナでの二日間、楽しい時間をご一緒できることを、今から楽しみにしております。
お気をつけて、良いご旅行を。


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