ガルネリモデル その後

ガルネリ 1731年 ex Huberman モデル、アーチ削りの作業になっております。

ミニカンナでの作業ですが、普段製作することが多いストラドモデルと比較して、幅が少し狭く、また、全体の形も違いますので、隆起の形も違ってきます。
どのようなアーチにすれば見た目が美しく、また、音が良い楽器になるのか、ミニカンナで削りながらイメージを固めていきます。
ガルネリモデル その後_d0047461_06454885.jpg

続いて、スクレーパーでの作業になります。
ほぼ真横からに光を当てて影を作り、全体のバランスを整えながら、滑らかなカーブを仕上げていきます。
ガルネリモデル その後_d0047461_06460193.jpg

裏板のアーチが仕上がりました。
初めてのモデルの場合、アーチによって、どのように音色が変化するのか予測を付けづらいのですが、今までの経験に照らし合わせながら、最適と思われる隆起に仕げていきます。
ガルネリモデル その後_d0047461_06461306.jpg

表板も、同じ工程で仕上げていきますが、途中でエフをデザインして、最終的な楽器の表情をイメージしながら削っていきます。
ガルネリモデル その後_d0047461_06462509.jpg

さて、エフの話が出ましたが、オリジナルの楽器のエフはこんな感じで、左右が対称形ではなく、それぞれ、主張を持った造形となっています。
また、ボディのCの部分も、左右で開き具合が異なっていて、アンバランスな印象を受けます。
ガルネリモデル その後_d0047461_06465688.jpg

ですが、左右、どちらの造形を見ても、この楽器のイメージを明確に表していて、トータルで破綻せずに一つの表情を作っているのは、さすが、ガルネリさんだなと思うところです。
人間の顔も左右で微妙に異なりますが、どちら側を見ても、その人だということを見間違えないですし^^、左右の微妙な違いが表情に魅力を作っている事に似ている気がします。

問題は、この楽器をモデルにして新作ヴァイオリンを製作する場合に、どこまで忠実に造形を再現するのかという点です。
この点については、過去に、イザイモデル、ハイフェッツモデルを製作した時にも説明しておりますが、基本的には、左右対称に製作するというのが私のポリシーですので、オリジナル楽器の左右どちらかを選択して、開く形で全体のモデルを作ります。

ただ、それでは、完全に左右対称な楽器になり、オリジナル楽器のような味わいが足りず、表情が薄い楽器になってしまいますので、実際に木材を削る際に、微妙に修正して、雰囲気を作っていくという作業になります。

いずれにしても、どのモデルで製作する場合でも、製作者の個性、ものの考え方、生き方などが色濃く反映されるのが楽器製作なので、そこが魅力でもありますし、完成した楽器を見れば誰が製作したか分かるような、奥の深い意味でのオリジナリティを追求していきたいと思っております。


ミケにゃんは、ホットカーペットが大好きですが、どちらかというと、上半身というか、頭を温めるのが好きなようです。
のぼせてしまいそうで、少し心配なのですが、、。
ガルネリモデル その後_d0047461_07074480.jpg




by violino45 | 2018-02-12 15:13 | 製作記 | Comments(2)

Commented by junjun at 2018-02-12 16:43 x
菊田さん、こんにちは。

ガルネリモデルの製作アップ有難うございます。

ミニカンナやスクレパーの時から
見た目の美しさだけでなく、美しい音を
イメージされているとの事、
今まで何度も、ブログ拝見してるのに、
改めて そうなんだ!と びっくりしました。

見た目が美しい、のは、バランスがよい
イコール 音の響きが まとまり
ひいては、楽器として よい
という シロウト考えが 見事に 違うというか
なんだか、1歩 今までと違う見方の提示をくださいましたこと、凄い驚きと新鮮な
興味につながりました。

ガルネリさん、モデル、、、
私には左右の差がわかりませんが、、、
美しい楽器だな、、、と思いました。。

楽器の奥深さはわかりませんが、
楽器を心から大切に思って、音楽を楽しみたいな、と改めて思いました。
菊田さん、感謝致します。

みけにゃん、
可愛い〜です。早く春にならないかな?ですかね。。笑笑
Commented by 菊田 at 2018-02-13 00:11 x
Junjunさん、こんにちは。

そうですね~、見た目の美しい楽器は、やはり音も良い場合が多いのですが、アーチの作業の場合、材料の性質に合わせて、響きやすい隆起を考えていかなければならないので、見た目にバランスが取れているように見えても、実は、音響的にはイマイチな隆起の場合も起こりえるので、アーチの作業はなかなか悩ましいです。。

この後の、厚み出しの作業になりますと、音の事だけを考えて削れば良いので、その点の悩みは無いのですが、でも、その時点でアーチを変えたいと思っても無理ですので、やはり、アーチの作業は重要です。

ウズマキは、その点、音のことを考えなくても良いのですが、、その分、造形的なものを突き詰めていくと、やはりスパイラルに陥りますので、ヴァイオリン製作はどこまで行っても悩ましいという感じです^^。

ガルネリの楽器は、左右をトレースして重ねてみると、すごく形が違っているのですが、全体を正面から見ると、絶妙なバランス、美しさを持っていて、一つの楽器として見事にまとまっているところがすごいです。

ミケにゃんの顔も、左右ですごく模様が違うのですが、その可愛さには変わりがないのと同じでしょうか^^??
名前
URL
削除用パスワード