もう1台の新作ヴァイオリン、と2005年のヴァイオリン 動画でご紹介

先日ホワイトでご紹介しました、もう一台のヴァイオリン、輪野光星さんに試奏いただきましたので、動画にてご紹介させていただきます。

このヴァイオリンは、日本ヴァイオリン製作研究会、春の展示会」にて展示予定です。

日時:2017年5月20日(土)と21日(日) 両日とも10時~16時30分
場所:Academy Hall (アカデミーホール)
住所:東京都豊島区東池袋1-30-6 セイコーサンシャインビル B1

☆入場は無料です☆ 
池袋の展示会では、両日とも、展示楽器を使用した演奏会が開催されます。
このヴァイオリンは日曜日の13時からの部で演奏いただく予定です。

では、輪野さんの演奏をお聴きくださいませ。
1曲目は、パラディスのシチリアーノ、2曲目はバッハのパルティータ2番の、いずれも冒頭部分です。



この楽器、誕生直後で、まだニスの乾燥も不十分な状態での録音でしたが、元気に歌ってくれて安心しました。
輪野さん、今回も素敵な演奏をありがとうございました。

では、楽器の写真をご紹介させていただきます。
前回と同じく、A.Stradivari、1705年モデルです。
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裏板は、少し変化のあるトラ杢です。
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エフとコーナー部分の仕上げです、柔らかさとシャープさの融合は、永遠のテーマです。
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裏板の、コーナー部分です。
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ウズマキは、前作と同じく、新しいモデルを使って製作しました。
具体的には、1715年のA.Stradivari、"Emperor"を意識したモデルとなっておりますが、もちろん完全コピーではなく、自分なりのスタイルを目指して製作しました。
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 ぜひ展示会場にて、実物をご覧いただき、貴重なご意見を伺えれば嬉しいです。
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久しぶりに、ラザーリ師匠にも見ていただき、いろいろご意見を伺いました。
2002年からの修業時代を経て、独立して10年近くになりますが、まだまだ勉強すべきことが多いです。
こうしてお邪魔することは私にとって、とても大切な時間となっています。
今回も、製作スタイルからニスの仕上げまで、たくさんの貴重なご意見をいただくことができました。
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さて、今回、輪野さんにはもう1台、楽器の試奏をお願いいたしました。
2005年から2015年までの10年間、宮地楽器さんにて試奏用楽器として展示しておりましたヴァイオリンです。
現在は、その役目を終えて私の手元にあるのですが、弦楽器フェアなどの展示会では、毎回おなじみの楽器となっております。
池袋の展示会でも展示させていただきます。

そして、この機会に、製作から12年経過してどのような音になったのか、記録に残しておこうと思った次第です。

早速、動画をごらんくださいませ。


いかがでしたでしょうか?
よく、ヴァイオリンを弾き込むことで音が成長して、味わいが出てくるという表現があるのですが、今回、録音しながらあらためて聴いていて、そういう面もあるのですが、また違った面での変化があることを、あらためて実感した録音となりました。

この楽器は、個人の演奏家さんに弾かれていたヴァイオリンではありませんが、宮地楽器さんや展示会にて、かなり頻繁に演奏いただいておりましたし、いろいろなイベントにてステージで演奏いただく機会も多かったので、弾き込みに関しては十分で、木材やニスも十分に乾いていて、鳴りという点では、かなりのレベルにあるのではないかと感じております。

ただ、それを、味わいが出てきたという言葉で表現してよいのかどうか、製作者としては慎重になるところです。

率直な感想としては、12年前に比べて成長しているのは確かですが、まだまだ、味わい深い音になったというわけではなく、人間でいうと、中学生のような、まだまだ元気の良い盛りのような音、もっと言えば、反抗期に突入したような尖った音でもあるような気がしました。

録音で、その雰囲気が伝わるのかどうか、あまり自信はないのですが、製作者として12年間、ずっとこの楽器の音を聴いてきての、率直な感想です。

ただ、もう一つの要素として考えなければならないのは、楽器が成長していくのに合わせて、それに見合った調整をする必要があるのは事実で、今回、あらためてじっくり音を聴いた結果、製作者の判断として、音の調整をし直すことにしました。
でも、帰国直前で時間が無いので、魂柱を交換するだけに留まりましたが。。

再調整した結果、元気の良い音には変わりはないのですが、若干、年齢なりの落ち着きを感じさせる音色になったのではないかと思っております。
調整後の録音はできませんでしたので、お聴きいただくことはできないのですが、5/20~21の池袋の展示会では、実際に御試奏いただければ幸いです。

では、この楽器の写真を少しご紹介いたします。
12年前の撮影ですので、クオリティはご容赦くださいませ。

最新作と同じ、A.Stradivari 1705年のモデルです。
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エフは、今とは少し雰囲気が違いますが、同じモデルで、アマティ的なスタイルです。
当時のブログの記事を見ると、いろいろ精神的な不安定な状態がエフに出ているようで、「哀愁のエフ」と自ら命名しておりました。
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ウズマキは、この頃から使い始めた、ラザーリ師匠から譲っていただいたモデルで製作したものです。
ストラディヴァリのスタイルですが、モデルとしては、ガリンベルティのモデルとなります。
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あらためて見直すと、ラザーリ師匠の後ろ姿を見ながら、ひたすら走り続けていた44歳当時のことを思い出します。
この楽器の1年後に、ヴィエニアフスキー・コンクールで1位をいただき、ある意味、人生が変わっていくのですが、根本的な部分では何も変わることなく、一台一台の楽器に集中して製作を続けられていることに感謝して、これからも精進していきたいと思っております。

長文をご覧いただき、ありがとうございました。


by violino45 | 2017-05-03 16:42 | 製作記 | Comments(4)

Commented by parnassus at 2017-05-03 23:28
ご無沙汰しております。
新しい楽器も、色々なことを説明いただきありがたいのですが、何より2005年君について・・
もう中学生に突入なのですね~。
>反抗期に突入したような尖った音でもある
との感想、すごく理解できて、笑ってしまいました。
ほんと元気いっぱいですよね。これから、菊田さんの下で、エレガントなレディ(端正なジェントルマン?)に成長していくのでしょうか?
そういえば、うちのカノーネ君は、青春まっさかりセブンティーン・・年齢相応の経験をさせてあげられてないかもです。orz
5/7は先約があって伺うことができず、ちょっと大人らしくなった2005年君を聴けないのは残念ですが、ご盛会を祈念いたします!あ。*たにつち*でした
Commented by Junjun at 2017-05-04 05:01 x
菊田さん、こんにちは

新しい生まれたての楽器と2005年のバイオリンの
アップ、そして輪野光星さんの素晴らしい演奏、有難うございます。

とても美しい新しい楽器、前回のものより
元気な男の子みたいな感じがしました。
逆に前回のアップされた楽器は、少し優しい女の子的な感じがしました。
しかし、両方ともハリと品があり この先
10年20年 またそれ以上経った時に どんな音を
出すのかなと 興味がわきます。

そう感じた中での2005年の音を聴かせて頂きました。色々な経験をしてきて 確かに音に深みがあります。
私も以前 触らせて頂いてますので親しみをおぼえる楽器さんです。

今回、改めて驚いたのは、菊田さんが
楽器が成長するのに見合う調整が必要だという部分です。楽器が演奏する人の元へ行ってからは
通常は そのまま だと思っていたからです。
それを考えると、巣立って行った楽器と、こうしていつも、見守られている楽器、どんな差がでるのか大変興味深いです。

私の楽器はもっとお兄さんですが、まだまだ元気な感じがしたり、また 私が弾くから そうなのかな
とも思ったり、色々考えると 今までとか違う面で
新たにバイオリンに興味がわきます。
これも製作者である菊田さんが、ブログで意見を聞かせてくれたお陰と感謝いたします。

日曜日、もう直ぐですね!
お疲れとは存じますが、呉々もお身体ご自愛のほど また日本でのご活躍を 楽しみにしております。
Commented by 菊田 at 2017-05-04 17:23 x
たにつちさん、こんにちは。
こちらこそご無沙汰してしまい、すみませんです。

2005年君、もともと元気に鳴る楽器ではあったのですが、10年ぐらい経過した頃、落ち着いた音色に変化してきたという感想をいただくことが多くなって、やはりそういうものかな?と納得していたのですが、少し調整し直してみたら、以前にも増して尖った音が復活した感じです。

この録音は、その時点で収録したのですが、なんとなく、魂柱が合っていないような気がして、交換してみたら、少しだけですが、落ち着いた音色になったような気がしています。

10年以上、自ら製作した楽器が身近にあることで、いろいろなことを経験できて、大変勉強になっていますし、その経験を新しい楽器に活かすことができますので、この2005年君には本当に感謝しています。

今回、カルテットの第一ヴァイオリンとして弾いていただくのですが、どのような音で響くのか、今から楽しみです。

カノーネ君、17歳になったのですね~。。
まだまだ思春期、でも大人への入り口という感じでしょうか^^。
次回、またゆっくりと音を聴かせていただける日を楽しみにしております。
Commented by 菊田 at 2017-05-04 18:30 x
Junjunさん、こんにちは。

楽器へのご感想、ありがとうございます。
そうですね、弦の違い、録音の微妙な違いもあるのですが、今回の楽器は、より明るい音色の傾向にあるように感じました。
でも、生まれたばかりの楽器は、どんどん音が変化していきますので、池袋でご覧いただく時は、また違う印象になるかもですね。
ぜひ、御試奏いただければ嬉しいです。

新作楽器は、最初の数週間でも変化しますが、小さな変化を繰り返しながら、少しずつ成長して、やはり10年も経過すると、大きな変化となりますので、その時々の楽器の状態に見合った調整をしないと、楽器本来の音色は引き出せない場合が多いです。(そうでない楽器も、もちろんあります)

一方、数百年を経過した楽器は、すでに安定した状態を維持していますので、短期間で大きく調整を見直す必要はないのですが、いずれにしても、どんな楽器であっても、楽器の音に真摯に耳を傾け、思い込みでなく、最善の調整を尽くすことが大切であることには変わりないと思っております。

2005年の楽器は、久しぶりに魂柱も交換して、楽器の新たな面が見えてきた気がして、これからが楽しみになってきました。
5月7日には、第一ヴァイオリンとして、そして、ソロでの演奏もありますので、生演奏でお楽しみくださいませ。

もちろん、池袋の展示会でも、展示させていただきます。
またご感想を伺えましたら嬉しいです。

会場にて、お目にかかれますのを楽しみにしております。
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