バロックヴァイオリンの動画と、ガルネリモデル。
1月も半分過ぎてしまいました。
今年も、時間の流れを懸命に追いかけていく一年になりそうな予感です。
さて、タイトルに書きました、バロックヴァイオリンですが、丁度1年前に完成して、お客様にお渡しした楽器なのですが、今回、演奏の動画を、お客様ご自身が撮影されましたので、ご紹介させていただきます。
演奏は、堺みなみさん、現在、ハンガリーのオーケストラの団員として演奏活動をされています。
バロックバイオリンは、完全にオリジナルのバロック仕様ではなく、モダン楽器に変遷していく中間ぐらいの仕様ということでご注文をいただき、製作させていただきました。
以下、堺みなみさんの簡単なプロフィールとともに、演奏をご紹介します。
「7歳よりヴァイオリンを始める。武蔵野音楽大学器楽科卒業。同大学院修士課程を修了した後、研修員として研鑽を積む。2013年9月、ジュール・フィルハーモニー管弦楽団(ハンガリー)に入団。」
曲目は、G. P. Telemann: Zwölf Fantasien für Violine ohne Bass Nr.7 Dolce
調弦は、A=430 です。
いかがでしたでしょうか?
裸ガット弦のバロックヴァイオリン、すべてが初めてのことばかりで、大いに戸惑いつつ、打ち合わせを重ねながら製作しましたが、結果的にご要望通りの楽器に仕上がり、喜んでいただけてホッとしましたし、こうして、元気に鳴っている演奏動画を拝見させていただけるのは、製作者としてとても嬉しいことでした。
これからの、楽器の成長が楽しみになりました。
さて、タイトルにも書きましたが、今年の1本目の楽器は、ガルネリモデルとなりました。
1740年製の、バルトロメオ・ジュゼッペ・ガルネリ、いわゆる、デル・ジェズ・ガルネリ製作の、ハイフェッツが愛用した楽器をモデルに製作しました。
デル・ジェズの楽器は、左右対称でないものが多いですが、この楽器は、その中でもとりわけ大胆な雰囲気を持った楽器で、私の製作スタイルではなかなか難しいと思われましたが、いつもどおり、コピーを目指すのではなく、モデルとしてシルエットを受け継ぎつつ、私の製作楽器としての特徴を出していくこととしました。
表板は、こんな感じで仕上がりました。
裏板も、以下のとおりです。
エフは、普段、ストラドやアマティを見慣れていると、この大胆さには気持ち良さすら感じますが、そのままコピーしてしまうと、私の製作スタイルの範疇を超えてしまう気がしますので難しいところでしたが、でも、モデルを特定できるだけの特徴、雰囲気は表現できたのではないかと思います。
裏板は、オリジナルに近い、幅が広いトラ杢の材料を選びました。
コーナー部分の処理も、悩むところでしたが、ここは、オリジナルよりも、自分のスタイルを優先して仕上げました。
ウズマキは、さらに大胆な造形ですが、でも、破綻することなく、楽器としての存在感を主張しているのは、さすがにガルネリだと実感します。
この部分も、さすがに、ゆがんだウズマキを作るのは私の感性が拒否しますので、モデルとして参照しつつも、結果的に、いつもと大きくは違わない仕上がりになってしまいました。
ここまでオリジナルから離れたラインにしたことで、はたして、楽器のモデルを再現したと言えるのか?、自問自答する部分ではありますが、楽器全体の雰囲気や、その存在感で、十分にハイフェッツモデルを表現できるのではないかと信じ、製作しました。
また、ニスが塗り終わりましたら、ご紹介させていただきます。
by violino45 | 2015-01-18 07:14 | 製作記 | Comments(3)
バロックバイオリンの演奏のUPありがとうございます。
実は、ちゃんと耳にした事が無かったので こんな音色になるんだな と知る事が出来て、良かったです。
新しい楽器製作 のご報告。
モデルとなるバイオリンの画 とても魅力的です。
そして、菊田さんバイオリンの
美しさ 凄いです。
楽器製作の中で、色々な考えを持って行っているという部分を拝読させて頂き 仕事への向かい方、考え方
職種は違っても、私も仕事に対して常に全力で行きたいと感じ、身の引き締まる思いがしました。
ありがとうございます。
私も、バロックバイオリンを手がけたのは初めてでしたので、最初に音を出した時に、良い状態なのかどうか判断がつかず、ネット上で聴ける、ほとんど全ての録音を聴いて、悩みながら音作りをしましたが、納品するまでは、とても不安でしたので、お客様に喜んでいただけて、そして、すばらしい演奏動画も聴くことができて、製作者としてとても嬉しい気持ちです。
また、ストラディバリや、今回のガルネリをはじめ、オールドと呼ばれる楽器はすべて、もともとはバロック仕様として誕生したわけですので、楽器のルーツを探ることは、とても意義深いことだと感じました。
コピーモデルについては、いろいろな考え方がありますが、答えは一つではないという気がしています。
Junjunさんのお仕事も、いろいろな可能性の中から最善の方法を選び、常に全力を尽くされていることと想像しております。
こちらこそ、いつも温かいコメントをありがとうございます。
今年一年、頑張れそうです^^。