砥部町での演奏会  動画のご紹介

11月29日(土)に愛媛県 砥部町文化会館で開催されました、
~菊田浩製作楽器による、演奏会・楽器説明会「クレモナからの響きⅡ」~
から、動画を一部分、ご紹介させていただきます。

とても素晴らしい演奏会でしたので、その一部分を抜粋することは大変心苦しいことですが、演目の全てをブログ内でご紹介することは難しく、部分的なご紹介になってしまうことをご了承いただければ幸いです。

1曲目は、「モーツァルト作曲、ディヴェルティメント K.563」 より、第5楽章と第6楽章です。

ヴァイオリン: 原瀬万梨子さん (2014年製、アマティモデル)
ヴィオラ: 西村壮さん (2012年製、ストラディバリモデル)
チェロ: 須賀千浪さん (2003~2014年製、ストラディバリモデル)

6楽章からなる大曲を、素晴らしい演奏で聴かせていただきましたが、今回は、後半のみご紹介いたします。
動画の途中で、3台の楽器を写真で少しご紹介していますので、併せてお楽しみください。



いかがでしたでしょうか?
今までも、私のヴァイオリンとヴィオラを使用した演奏会を開催いただき、その度に感激の時間を過ごさせていただきましたが、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが揃っての演奏を聴かせていただいたのは初めての経験でしたので、言葉にすることは難しい、感動的な瞬間でした。

おそらく、このような経験ができる製作家は数少ないと思いますし、私自身、自分が生きている間に経験させていただけるとは、夢にも思っていなかったというのが正直な気持ちでした。

今回、貴重な機会を与えていただいた皆様への感謝の気持ちとともに、1音1音、楽器の響きを胸に刻みながら聴かせていただきました。


続いて、「イベール作曲、二つの間奏曲」 です。

フルート: 田所博さん
ハープ: 田中淳子さん
ヴァイオリン: 西村壮さん (2009年製、ストラディバリモデル)



今回、私自身、久しぶりにフルートとハープの生演奏を聴かせていただき、日本を代表する演奏家である田所さんと田中さんの、美しい響きに陶酔した時間でした。
西村さんには、2009年のヴァイオリンの魅力を存分に引き出す演奏をしていただきました。
3つの楽器の個性が主張しつつも溶け合う、素晴らしい演奏でした。

今回、久しぶりに見た2009年のヴァイオリンですが、低い方の2弦(G,D)に、天然素材の弦であるオリーブが張られていました。(↓写真の、一番手前が、2009年のヴァイオリンです。)
今まで、私自身もこの弦を何度か試したことがあるのですが、実は、私の新作楽器とは相性が良くないと感じていました。
今回、西村さんの表現力に富んだ演奏を聴かせていただき、とても自然な音色と響きでしたので驚きましたが、私のヴァイオリン製作への今後の可能性を感じることができたのは、貴重な経験でした。
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3曲目は、「モーツァルト/フルートとハープの為の協奏曲 K.299」 より 第1楽章
プログラム上での最後の楽曲です。


フルート: 田所博さん
ハープ: 田中淳子さん
第1ヴァイオリン: 原瀬万梨子さん (2014年製、アマティモデル)
第2ヴァイオリン: 西村壮さん  (2005年製、ストラディバリモデルに持ち替え)
ヴィオラ: 江口志保さん   (2006年製、ストラディバリモデル)
チェロ: 須賀千浪さん   (2003~2014年製、ストラディバリモデル)
ファゴット: 後藤一宏さん



もともとは、オーケストラ編曲の曲ですが、弦楽アンサンブル版での演奏となりました。
コントラバスのパートを、後藤さんにファゴットで演奏していただきました。

フルートの田所さん、ハープの田中さんの演奏が素晴らしいのは言うまでもないですが、私の4台の弦楽器たちも、奏者の皆様の素晴らしい演奏に応えることができていたと思います。

アンサンブルの中ではありますが、カルテットが実現したのも初めての光景でしたし、2003年、2005年、2006年、そして2014年と、クレモナでの時間が凝縮したような合奏となり、私自身にとっても、感慨深い時間を過ごさせていただきました。


3台のヴァイオリンの弾き比べ試奏コーナー

さて、今回の演奏会の途中では、私のヴァイオリンを3台弾き比べて、その音色の違いを聴いていただくというコーナーもありました。
モデルも違いますし、先述したように弦も異なりますので、純粋に年代の違いを聴き取ることは難しい状況ではありますが、楽器のヴァリエーションによる音の違いを楽しんでいただければ幸いです。

ヴァイオリン:西村壮さん 
①2009年製作 ストラディバリモデル (弦:GDオリーブ+Aドミナント+Eゴールドブラカット27)
②2005年製作 ストラディバリモデル (弦:エヴァピラッチ)
③2014年製作 アマティモデル    (弦:ドミナント+Eゴールドブラカット27)

曲目:チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲から、冒頭部分


いかがでしょうか?
私自身、2005年の楽器を完成した時の音色は良く覚えておりまして、「若い」と言えば聞こえが良いけれど、まだまだ固い音色で、音量も不十分なヴァイオリンでした。
その後、訳あって、宮地楽器さんの見本楽器として展示させていただくことになりましたが、当初は、その鳴りの渋い性格のせいで、見本品としては十分な役目を果たせない状況が続きました。

私としては、いつも申し上げているポリシーのとおり、将来的には成長していくことと信じていましたが、山本さんを初め、いろいろな方からのご指摘を受けて、やはり最初からもう少し実力を発揮する楽器作りを目指す必要があるのではないかと考え、いろいろな改良を加え始めたきっかけになった楽器ではありました。
(古い楽器のような音色を目指すという意味ではありません)

今回、この3台のヴァイオリンの音を聴き比べる機会をいただきましたが、2005年の楽器は、宮地楽器さんや弦楽器フェアで多くの皆様に御試奏いただいたり、イベントなどで弾き込んでいただいた結果、(「笑ってコラえて」では、千住さんにも弾いていただきました(汗))、私の予想を上回るほど、良く響く楽器に成長したと感じました。

2009年の楽器も、当初はもう少し若い声でしたが、5年間、西村壮さんに弾き込んでいただいた結果、短い期間で大きく成長したヴァイオリンとなったと思いますし、先述しましたように、ナチュラル素材の弦がマッチしたのは、驚きとともに大きな収穫となりました。

2014年のアマティモデルは、誕生したばかりの、まだまだ若い声ではありますが、それでも、他の2台に負けずに芯のある音色で響いてくれて、非常に手前味噌ではありますが、私自身も製作家として少しずつ成長できていることを実感できた気がしています。

西村さん、山本さん、ありがとうございました。



最後に、アンコールにお応えしての2曲をご紹介いたします。

「フォーレ作曲、シチリアーノ」
フルート:田所博さん
ハープ:田中淳子さん

そして、「マスネ作曲、タイスの瞑想曲」です。
ヴァイオリン:西村壮さん (2009年製、ストラディバリモデル)
ヴァイオリン:原瀬万梨子さん (2014年製、アマティモデル)
ハープ:田中淳子さん




素晴らしい演奏をご披露いただきました演奏者の皆様に、あらためて厚く感謝を申し上げます。

このかけがえのない経験を胸に、これからも、さらに良い楽器を目指して精進していきたいと、あらたな気持ちに燃えております。
今後とも、よろしくお願いいたします。

by violino45 | 2014-12-16 16:33 | 動画 | Comments(2)

Commented by Junjun at 2014-12-17 07:35 x
菊田さん、こんにちは。

演奏会の動画UPありがとうございます。盛り沢山で、楽しみながら演奏を聴かせて頂きました。

楽器の、ご説明や映像が
わかりやすく、興味深いものでした。フェアーやブログ、講演会などを通して、楽器が生まれてから、様々な経験をして その音が成長していく という事を知るチャンスをくださいまして、本当に感謝いたします。
こうして、この様な特別な演奏会が
改めてそれを実感させて頂きました。

2014年の元気でハリのある、でも柔らかな音。
そして、そのお兄さん楽器は、深みがあるまろやかな音、素敵でした。

チェロに対する想い、10年経って
完成し、先生にも見ていただけた
とても、羨ましいような素敵な話ですね。
私も、いつも自分の成長を客観視しながら前を向いて進んでいきたいと感じました。
ありがとうございました。

寒さも一段と厳しくなります。
お身体ご自愛ください。
Commented by 菊田 at 2014-12-17 15:38 x
Junjunさん、こんにちは。
動画を御覧いただき、ありがとうございます。
楽しんでいただけたのでしたら、嬉しいです。

私自身も、普段は、最新作を生み出すことだけに集中していますので、こうした機会に、私の作品たちがどのように成長しているのかを感じることができるのはとても貴重な経験になっております。

Junjunさんはじめ、普段、お世話になっている皆様にも、動画にて、その経験を共有していただければ嬉しいです。

今回、チェロを完成させて持ち帰り、演奏会で弾いていただくという、光栄な出来事を体験させていただきましたが、その過程で、このチェロは、多くの大切なことを教えてくれた気がしています。

2014年も残り少なくなってきましたね。
クレモナも、雨と霧の日々ですが、日本も寒そうです。
風邪など、お気をつけてお過ごしください。
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