プロジェクト・チェロ

タイトルが大げさですみません。

実は現在、一台のチェロを仕上げている最中です。

とは言っても、新作楽器としてチェロを製作したわけではありません。

10年前、クレモナの製作学校の最終学年に、ロレンツォ・マルキ先生の指導の下、製作したチェロです。
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こちらが、ラベルです。
IPIALLと書かれているのが学校の正式名称ですが、ストラディバリさんの名前も使われているのは凄いですね。
ストラディバリさん、そしてマルキ師匠の名前の下に、自分の名前があるのは、やはり嬉しいものです。
ちなみに、現在は、学校の名前が変更になっているようです。
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この楽器、ホワイトで完成していたものを、卒業と同時に買い取らせていただいたのです。
すぐにニスを塗ろうかとも考えたのですが、当時は、まだニスの技術も未熟だったので、ある程度ニス塗りに自信を持てる時までと思い、乾燥を兼ねて放置していたのでした。

そう思っているうちに、10年経ってしまいました。
ニス塗り技術は、未だ不十分ながら、ある程度は上達したとは思いつつ、ヴァイオリンとヴィオラの製作に集中していたので、チェロにまで手が回らなかったというのが正直なところでした。

ですが、毎年お世話になっている松山でのリサイタルにて、今年はチェロ演奏の企画をいただいたこともあり、この機会に完成させなければ一生ホワイトのまま?という不安もあったので、重い腰を上げたというわけです。

というわけで、今年の11月29日(土)に、今回は松山市の隣の砥部町文化会館にて、私の楽器を使用したリサイタルが開催されまして、ヴァイオリン、ヴィオラとともに、このチェロも演奏いただく予定です。
詳細は、後日、ご報告させていただきます。

それに先だって、弦楽器フェア(10月31日~11月2日、東京九段下)でも、宮地楽器さんのブースにて、このチェロを展示させていただくことになりました。

(製作学校の規則で、授業で製作した楽器を販売することはできないため、非売品での展示となります)

10年前の作品で、まだまだ未熟な所も多いですが、もしかしたら、私にとって最初で最後のチェロになるかもしれない楽器ではありますので、、、この機会にご覧いただければ嬉しいです。

では、少し、写真にてご紹介させていただきます。

モデルは、おそらくストラディバリですが、詳細は不明です。
製作学校にて、歴代使われている型を使用しました。(マエストロ・スコラーリのサインが入っていました)
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裏板は、あまりトラ杢の強い材料ではありませんが、予算が十分でない製作学校ではやむを得ないところです。
ですが、マルキ先生の選んだ材料ですので、音響的には申し分無い木材です。
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エフは、マルキ先生のスタイルです。
まだまだ技術的には未熟で、当時、よく先生に叱られて、半泣きになりながら削っていたことを思い出します。
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当時、私は腰を傷めていて、ヴァイオリンでも削るのは辛い状況でしたので、大きなチェロのアーチを削るのは本当に辛かった記憶があります。
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それだけに、完成したときの喜びは大きかったです。
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当時はまだ勉強不足で、スタイルなどを考える余裕も無く、ひたすら、精度の高い仕事を目指して削っていましたが、今見ると、まだまだ甘いところが多いです。
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良く見ると、表板の一部分が、別の木材で代用されているのが分かります。
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実は、荒削りの途中で、節が出て来てしまい、見た目はともかく、構造的に問題がある状態でしたので、先生の判断で、木材を入れ替えるという選択をしたのでした。
これが、切り取ったオリジナルの部分です。
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バイオリンぐらいですと、このような場合、別の材料で最初からやり直すのですが、チェロの材料は貴重ですし、限られた授業時間の中で完成を目指すので、やり直す余裕は無かったという事情もありました。
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ウズマキは、製作学校のシステムの中で、特別講習のような形での授業があり、その時に製作しましたので、マルキ先生のスタイルではなく、臨時講師として指導に来られていた、サンドロ・アジナーリさん(高橋明さんの師匠です)に習って製作しました。
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さて、こうして完成して、ホワイトで10年間温存してきたチェロですが、ニス塗りをする時になって、一つの悩みが発生しました。
というのも、10年間経過した今、あらためて見ると、細かい仕上げが不十分だったり、なめらかに仕上がっていなかったり、傷が残っていたりと、つまり、気になるところが多いわけですが、その多くは、修正しようと思えば可能なものなのです。

ですが、それを実行してしまうと、マルキ先生の下で苦労した痕跡がすべて消えてしまうことになる気がしますし、ラザーリ師匠のスタイルと混ざってしまい、中途半端なことにもなります。

この楽器が、もし、作品として売りに出すのであれば、迷うこと無く、最大限の完成度を目指して修正するのですが、そういう状況でもありませんし、せっかく10年の時を経て完成させるのですから、その時間の重みをそのまま封じ込めるのも意義深いのではないかと考えました。

おおげさなタイトルを付けたのは、こういう思いからです。

なので、一切、木材には手を入れず、マルキ先生と共に完成した状態のまま、ニス塗りをすることとなりました。

写真は、数回ニス塗りをして、少し色がついて来たところです。
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今回、初めてチェロのニス塗りを経験して分かりましたが、ヴァイオリンやビオラとはまったく別の世界でした。
チェロのニス塗りを上達するためには、チェロでの経験を積む必要があると実感しました。

なので、当初の思惑とは違って、10年の経験を活かせたニス塗りで仕上げることはできなさそうですが、それでも、良い経験になりましたし、完成度は別として、興味深い楽器になったのではないかと思っております。
長文をご覧いただき、ありがとうございました。
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by violino45 | 2014-08-29 18:02 | 製作記 | Comments(8)

Commented by shige at 2014-08-29 22:21 x
お久しぶりです!
10年の間ホワイトの状態だともうホワイトではない感じですかね?(笑)
どんな感じになっているか楽しみです。
今年も弦楽器フェアでお会いできることを楽しみにしてます。
私の方も上手く行けばビオラの新作を持っていけるかもしれません。
では、弦楽器フェアで!
Commented by 菊田 at 2014-08-30 00:17 x
shigeさん、こんにちは、ご無沙汰しております。

はい、程良く焼けた感じで^^、茶色くなってました。
チェロの仕上げは、初めての経験で、フィッティングなども悪戦苦闘ですが、、なんとか楽器の形で仕上げて、日本に持ち帰りたいと思っております。

弦楽器フェアでの再会、楽しみにしています。
ビオラもぜひ拝見させてくださいね。
Commented by junjun at 2014-08-30 04:07 x
菊田さん、こんにちは。
数日前から東京も涼しく、いきなり秋が来たみたいです。
十年あたためていたチェロ。製作学校時代の想いや、卒後今までの時間が反映される特別な楽器だという事、伝わってきました。
楽器フェアーでの展示および松山での演奏会、、、どんな楽器かな〜と考えただけでもなんだかワクワクします。
製作者さんサイドの気持ちをこうして伝えてくださることで、弾き手や聴き手として 楽器の持つ魅力に新たな見方が出来るような感じがしました。有り難うございます。
毎日ご多忙と存じますが、季節の変わり目 くれぐれもお体ご自愛ください、
11月まで、あと二ヶ月、、、早いですね。夏好きな私にはこの時期はちょっと残念な感じでしたが、ここ最近秋の楽しみが出来たことも
感謝致します。ではお目にかかれる日を楽しみにしています。
Commented by 菊田 at 2014-08-30 06:28 x
junjunさん、こんにちは。
東京も涼しくなったのでしたら、なによりです。
でも、まだまだ暑さも戻ると思いますので、お気をつけくださいませ。

チェロ、、10年も放置することになるとは、私自身はもちろん、周りの皆様も想像していなかったと思うのですが、ここに来て、急遽仕上げることになったのも、何かのご縁を感じますし、貴重な機会を与えていただき、リサイタルの主催者様には本当に感謝しています。

そして、売り物でもない楽器をブースに置かせていただけて、宮地楽器さんにも感謝ですね。

今回、ニスを塗りながら、製作学校時代の、楽しかったこと、大変だったことなど、改めて思い出して、初心に帰ることができた気がしています。

弦楽器フェアでは、ぜひ触って、音も出してみてくださいね。

クレモナは、今日は少し夏が戻ってきた感じで、暑かったです。
私も夏好きですので、もう少しだけ、過ぎゆく夏を味わいたいと思っています。

Commented by 岡村 at 2014-08-30 12:35 x
菊田さん こんにちは。 チェロですか
バイオリンとチェロとは、作製するのは
やはり違うもんなんですか?
最初の写真は10年前? 若いですね!(◎_◎;) 気をつけて帰国してください。

Commented by 菊田 at 2014-08-30 16:53 x
岡村さん、こんにちは。
チェロは、ヴァイオリンとまったく同じ作り方なのですが、サイズが二倍強ありますので、やはり大変です。

10年前の記念写真、、若い、というより幼い感じですね。
数少ないマルキ先生との2ショット写真は、私の宝物です。
Commented by セロ弾き at 2014-09-03 09:36 x
いよいよチェロの完成間近ですね。
東京の弦楽器フェアや松山のコンサートに伺うことはできませんが、いつか直接拝見したり触れてみたいです。
卒業のときに買い取るとか授業で制作したものは販売してはいけないとかいろいろとルールがあるんですね。ラベルにMaestroとAllievoと書かれているところが学校というより師匠と弟子という感じでチェロは、これはこれで完成、ということですね。いい感じで飴色になってます。これだけでいい音が出そう。
Commented by 菊田 at 2014-09-03 18:56 x
セロ弾きさん、こんにちは。
チェロは、製作もそうですが、演奏の経験もないので、、完成した楽器がどの程度の音が出ているのかも判断できず、戸惑っております。

弦楽器フェアは、貴重なご意見をいただける場になると想像しておりますが、セロ弾きさんには弾いていただけず、残念です。
こちらこそ、またの機会に御試奏いただければ嬉しいです。

学校で製作した楽器は、転売しないという条件に同意することで、材料費+アルファ程度で購入できるシステムになっているようです。

数台製作した場合は、どれか一台だけ選べるので、迷わずこのチェロを選択したのですが、マルキ先生は、この楽器は学校に残しておきたかったらしく、残念そうにされていたことを覚えております。
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