次回作ヴァイオリンはガルネリ、カノン砲モデル。

次回作のヴァイオリンの製作に入りました。
モデルはガルネリ・デル・ジェズ「カノン砲」です。

このモデルは、2000年、2007年、2021年に製作したことがあり、今回で4台目となります。
パガニーニが生涯愛用したヴァイオリンとして知られ、大砲のような音がするという逸話から、「カノン砲」という名前が付けられています。

パガニーニの没後、誰にも弾かせないという条件付きの遺言どおり、ジェノヴァ市に寄贈されたヴァイオリンです。
おそらく、クレモナ市の「クレモネーゼ」とともに、世界で最も有名なヴァイオリンの一つと思います。

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内型は、2007年に作成したものを使います。
ガルネリは、ストラディバリモデルとはシルエットが異なりますが、内型の段階ではあまり変わらないように見えます。

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最初にブロック材を貼り付け、ヴァイオリンの形に削り、横板を熱で曲げて貼り付けます。

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センターバウツの部分は、独特のカーブなので、曲げ方も普段とは違う感覚です。

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上下バウツの横板も曲げて、内型に合わせていきます。

曲げの作業を、ショート動画でご覧いただけます。
https://youtube.com/shorts/DwfkXno4rqA

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完成した横板です。
これで、ヴァイオリン全体のシルエットが決まりました。
この横板に合わせて表板と裏板を切り抜いていきます。

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厳しい目でのチェックが入ります。

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# by violino45 | 2025-10-24 05:29 | 製作記 | Comments(2)

新作ヴァイオリン、横山令奈さんに試奏いただきました。

前回ご紹介した新作ヴァイオリン、クレモナ在住のヴァイオリニスト、横山令奈さんに試奏いただきましたので、動画でご紹介いたします。
横山さんに試奏をお願いしたのは、2019年以来、6年ぶりとなります。

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今回は、ヴァイオリンの音色が分かりやすい5曲を演奏いただきました。

・マスネ/タイスの瞑想曲
・メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
・ヴィヴァルディ/四季より 夏 第三楽章
・バッハ/パルティータ2番より Allemande
・サン・サーンス/白鳥

選曲の理由は、後程ご説明いたします。

10分間のミニリサイタルのような感じで聴いていただけたら嬉しいです。





ご視聴ありがとうございました。

選曲の理由を以下、簡単にご説明します。

①タイスの瞑想曲は、高音から低音までまんべんなく使い、ピアノからフォルテまでの強弱もあるので、楽器の音色が分かりやすい、ヴァイオリン試奏の定番の曲です。

②メンデルスゾーンの協奏曲は、冒頭から20小節、E線しか使わないメロディで、ヴァイオリンの高音の響きが良く分かる曲です。

③ヴィヴァルディの夏は、ヴァイオリンの反応の良さ、明瞭度が分かる曲です。 反応の悪い楽器だと音が分離せず、メリハリがなくなります。

④バッハのパルティータは、ヴァイオリンの4本の弦のバランスが取れていて、音色にばらつきが無いかを確認できる曲です。

⑤白鳥は、ヴァイオリンの中高域、特にA線とE線の表現力がよく分かる曲です。


ヴァイオリンは、様々な曲で最大限の表現力を発揮できるよう設計し、製作します。
新作楽器が完成した時は、製作者自身も、いろいろな曲で試奏し、性能を確認しますが、演奏技術の点で、どうしても楽器の限界までは引き出せないもどかしさがあります。
なので、できるだけ、プロの演奏家に試奏いただき、いろいろな奏法で楽器の性能をチェックしていただくことは重要となります。

今回、横山さんには、ヴァイオリンの音色を最大限に引き出す演奏をしていただき、感謝しております。
多忙な演奏活動を続けられておりますが、これからも、スケジュールが合えば、ぜひ試奏をお願いできればと思っております。

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# by violino45 | 2025-10-16 06:14 | 製作記 | Comments(2)

新作ヴァイオリン、写真でご紹介。

以前ホワイトでご紹介したヴァイオリン、完成しましたので、写真にてご紹介いたします。

今回も、A.ストラディバリ、1705年のモデルで製作しました。

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裏板は1枚板、伸びやかなトラ杢のカエデ材を選びました。
少し模様に変化があるのも、私好みです。

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エフ字孔は、ストラディバリモデルですが、少しアマティのスタイルも入った、柔らかい印象のモデルです。
師匠のニコラ・ラッザリさんから受け継ぎました。

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裏板の、コーナー部分の仕上げです。
ストラドモデルらしい、キリっとしたコーナーですが、柔らかさも感じる造形に仕上げています。

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スクロールは、ストラディバリの黄金期らしい、端正な中に、アグレッシブな動きも感じる造形を目指しています。

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正面から見た雰囲気も、ストラドモデルらしい、動きのあるラインです。

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斜めから見てもバランスが良いように仕上げます。

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ここからは、別の角度からご覧ください。
照明が変わると、また雰囲気が変わります。

裏板のトラ杢が、引き立って見えます。


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横板は、裏板と同じ木材を使いましたので、模様がつながって見えます。

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コーナー部分です。
パーフリングの先端が内側を向いているのが、ストラドモデルの特徴です。

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表板は、造形の美しさとともに、音色に深く影響する部分です。

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弦の振動が駒を経由して表板に伝わり、楽器全体が響きますが、エフ字孔の役割も大きいです。

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表板に穴が開くことで、適度に強度が下がり、自由に振動しやすくなるとともに、ボディ内部と外部を空気でつなぐことで、低音が響きやすくなります。
そして、ボディ内部に魂柱を立てる際にも、このエフ字孔が重要な役目を持ちます。

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そして、美しいデザインは、わずかの変更も許されない完成度で、古今東西、ヴァイオリン製作者の喜びであるとともに、悩ましい存在でもあります。

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スクロールも、照明を変えると、雰囲気が変わって見えます。

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ヴァイオリンのパーツの中でも、特に3次元的な造形なので、いろいろな角度から見てもバランスが崩れないように仕上げます。

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背面からの見た目も重要です。

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長文ごらんいただき、ありがとうございました。

このヴァイオリンは、先日のクレモナモンドムジカにて、ALI(イタリア弦楽器製作家協会)のブースで展示しました。
来場者の方からは、見た目も音も、良い評価をいただきました。

このヴァイオリンは、神田の宮地楽器本店、Music Oneにて展示されております。
ご覧いただけましたら嬉しいです。

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クレモナは、すでに冬のような気候になってきました。

猫たちは、くっついて温まってます。

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ちび丸は、時々、私を休憩させるように、膝に上ってきます。

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# by violino45 | 2025-10-10 16:14 | 製作記 | Comments(0)

39.5 センチヴィオラ、ホワイトで完成

いろいろ慌ただしく、スクロールの製作工程はご紹介できませんでしたが、39.5センチのヴィオラがホワイトで完成しましたので、ご紹介します。

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スクロールの製作作業は、以前作成しました動画でご覧いただけます。
字幕をONにしてご覧ください。




では、ホワイトで完成したヴィオラを写真でご紹介いたします。

モデルはストラディバリです。
以前製作した40センチのビオラを、少しだけサイズダウンして製作しました。

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裏板は、端正なトラ目の、2枚板です。
小柄なヴィオラでも、低音が良く響きそうな材質のカエデを選びました。

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裏板のアーチは、ヴァイオリンよりも少しだけふっくらとした造形にしました。
できるだけ、内部の容積を多くして、低音の響きを豊かにするためです。

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表板同様、裏板のアーチ、そして厚みは音色に深く影響します。
もちろん、材質が大切ですが、その材質を上手く生かせるかどうか、いつも悩むところです。

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コーナー部分の仕上げです。
ストラディバリモデルなので、パーフリングは少し内側を向きます。

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エフ字孔は、ラッザリ師匠のスタイルどおり、少しアマティの雰囲気が感じられるモデルです。

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エフ字孔の外側を彫り込んだ部分が、造形的なポイントになります。

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エフ字孔から見えるラベル。
遠い未来、この名前を見た人が、ポジティブな印象を持っていただけるような楽器として残っていたら嬉しいです。

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良い音で響いてくれそうな、表板です。

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スクロールも、ストラディバリの黄金期のスタイルで仕上げました。

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音にはあまり関係のない箇所ですが、将来的には、製作家を見分けるための要素にもなる、大切な部分です。

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いろいろな角度から見ても、造形が崩れることなく、バランスを取ることが重要です。

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背面も、時間をかけて仕上げます。

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作業は、これからニス塗りに入ります。

まだまだ楽器としての誕生には時間がかかります。

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クレモナは、朝晩は寒くなり、長袖が必要な季節となりました。

猫たちも、身を寄せ合って、暖を取っています。

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ちび丸は、一人でいることが多いです。

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# by violino45 | 2025-09-30 15:51 | 製作記 | Comments(2)

ヴィオラ製作記 ボディの完成

裏板と表板が仕上がったら、横板に貼り付けてボディを閉じます。

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表板を貼り付けた後は、ボディ内部の変更はできませんので、ニカワ付けする前に最終チェックします。

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焼き印を押します。
焼き印は、将来的に製作者を証明する手がかりの1つになりますが、コンクールに参加した楽器には焼き印がありませんので、絶対的なものではありません。

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そして、ラベルを貼ります。
ラベルも製作者を証明するものになりますが、エフ字孔から貼り換えることができますので、これも絶対的なものではありません。

140という数字は、いままでに製作した楽器のシリアルナンバーです。
楽器製作を開始したのが35歳の時でしたので、製作者の中ではけっして多い数字ではありませんが、ここまで来たかという思いはあります。

目標は、生涯台数200台なのですが、まだまだ先は長いです。
とりあえず、150台を目指して、1台ずつ、良い楽器を製作していきたいです。

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毎回、やり残したことがないか、疑心暗鬼になりながら、ボディを閉じます。
良い音に響いてくれることを祈りながら。

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完成したボディです。
ようやく、楽器らしい姿になってきました。

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まだエッジを丸めていないので、角ばった印象です。

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だいぶ前に作成した動画ですが、ヴァイオリンのボディを閉じる作業をご覧いただけます。
字幕で解説しております。

https://youtu.be/wXtY8Cznhk4



ご覧いただき、ありがとうございました。

クロ丸も、時々、作業台に登ってきます。

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ビッキーが膝に登ってくることは、珍しいです。

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# by violino45 | 2025-09-17 13:14 | 製作記 | Comments(2)