トリエンナーレ・コンクールの後に完成したヴァイオリン、写真でご紹介いたします。
最後に、私が試奏している動画もありますので、よろしければご覧ください。
このヴァイオリンは、11月16日(土)から、宮地楽器さんの店頭でご覧いただけます。
モデルは、いつものように、A.ストラディバリ 1705年モデルです。
2005年に、ラッザリ師匠からいただいたモデルなので、来年でいよいよ20周年となります。
ほぼ9割ぐらい、このモデルで製作しておりますので、愛着も深い、馴染みのモデルとなりました。
裏板は、私が好きな、変化のあるトラ杢の一枚板を使用しました。
エフ孔も、同じく20年近く使っているモデルです。
ストラディバリ・スタイルですが、アマティ的な柔らかさを加味したデザインとなっています。
裏板の、コーナー部分の仕上げです。
クレモナに来て23年、より良い造形を目指して精進してきた部分ですが、20年前の楽器と見比べても、あまり変わっていないようにも見えます。
でも、クレモナに来る前の楽器とは、さすがに違って見えますので、クレモナに来て勉強した意義は大きかったとも言えます。
ウズマキは、この数年、黄金期のストラディバリを目指して製作しています。
少しずつ、目指す造形に近付いている気もしますが、まだまだ到達点には遠いかもしれません。
では、違う角度から、照明も変えた写真もご覧ください。
ライトを変えると、トラ杢もよりダイナミックに見えますね。
コーナー部分のパーフリングの造形も、毎回悩むところです。
エフ孔は、見た目の美しさとともに、音響的にも重要な役割を持ちます。
激しく振動する駒の近くの表板に、これだけ大きな穴が開いているのですから、当然ですね。
もちろん、エフ孔がないと、魂柱を立てられませんので、その役目は重要です。
そして、エフ孔から楽器内部のラベルを見ることができるという、まったく別の役目も持っています。
製作家は、どうしても、美的観点から見てしまうのですが。
ネックのヒール部分は、音には影響しませんが、演奏性の上で重要で、また、製作者のスタイルが現れるところです。
つぶれたような、とか、栗のような、とか、いろいろな表現で言われますが、現代クレモナのスタイルでは、完全な円ではなくて、少し重心の低い、どっしりした造形が好まれています。
ウズマキは、いろいろな角度から見ても造形が崩れず、美しいのが理想ですが、なかなか難しいです。
正面からのウズマキが、造形的には一番難しく、製作家が悩むところです。
同じアングルでも、ライトを変えると、また表情が違って見えるのが面白いです。
さて、もったいつけてきましたが、拙演奏の動画です。
楽器が完成すると、毎回、音階で音色を確かめるとともに、簡単な曲を弾いて、演奏性もチェックするわけですが、今回は、その様子を撮影してみました。
きちんと練習したわけではなく、必死に譜面を追いかけているだけの、演奏とは言い難い動画ですが、音質のテストとしてご覧いただけたら幸いです。
生まれたての楽器が持つ音色の記録という意味で、私としては意義深い動画となりました。
ご視聴ありがとうございました。