カノン砲、アーチの削り出し

パーフリングが終わったら、アーチを削り出します。
カノン砲のポスターには、本物から採寸したアーチの見本が書いてあるのですが、それは参考にはせず、私なりに、この材料での最適なアーチを目指して製作します。
カノン砲、アーチの削り出し_d0047461_2047432.jpg

本物どおりに仕上げれば、当たり外れの無い音色の楽器にはなるのでしょうけれど、それでは材料を厳選して一台一台製作している意味があまりないと思いますし、木の特性を吟味して、最高の音色を目指すことが、伐採された木材への礼儀のような気がしています。

もちろん、未熟さから、木の性能を十分に発揮させてあげられない可能性もあり、それは悲しいことですが、そうならないように修行を重ねたいと思います。
カンナで仕上げたアーチはこんな感じです。
カノン砲、アーチの削り出し_d0047461_20535876.jpg

その後、スクレーパーで仕上げると、こうなります。
表面を滑らかにしているだけのように見えますが、実際は、かなり削り込んで、アーチを修正しています。
カノン砲、アーチの削り出し_d0047461_2055258.jpg

アーチが終わったら、厚みを出していきます。
厚みに関しても、ポスターにオリジナルのデータは書いてありますが、それは参考程度に見るだけにします。
理由は、アーチと同じです。
カノン砲、アーチの削り出し_d0047461_2057799.jpg

精霊君、、、微妙な表情ですね。
なにか不満なのでしょうか、、、・_・。

by violino45 | 2007-09-28 21:00 | 製作記 | Comments(6)

Commented by 森蔵 at 2007-09-28 23:14 x
またまた削りくずに埋もれてしまった精霊君ですね。伐りだされた木と一緒に森からついて来てみれば、「あれ?なんでワシの森から切り出した木にこんなことするのじゃ?」と思う日々かもしれません。でも菊田さんのような一流の職人さんが自然の木に命を吹き込み、楽器ができあがる頃には・・・きっと精霊君も納得してくれるでしょう(笑)。
次は精霊君がさらに納得するように、楽器をカノン砲のように頑張って鳴らしますね。
Commented by マルゲリータ山口 at 2007-09-29 11:04 x
こんにちは。イタリア北部は 北にひかえるスイスは山脈ですし、クレモナは秋の期間か短く冬の訪れも寒さが早そうな感じですね。お体にはお気をつけて下さい。

素人から見たいろんなヴァイオリンの表板の木目の特性ですが・・・、
やはりアッパーからロウアーまで木目が完全にまっすぐなほうが素敵に見える。量産品のような高級でない表板は美観的にもアッパーからロウワーまで木目の硬さというか雰囲気が不均一な印象ものが比較的多いかな、とか f字孔外側付近より中心のブリッジに近くなるとだんだん目が細かくなる作りの楽器が多いなというのが私の感想です。


菊田さんの表板の木目へのこだわりを教えて下さい。
楽器店で見た際には菊田さんの楽器は目が細かいものを選んでいらっるようですね。またストラドモデルとガルネリで表板の買い付けや選択もかわることはあるのですか。

Commented by Machako at 2007-09-29 11:25 x
こんにちは。
私の中では、デルジェスってなで肩なのに男らしい形のイメージがあります。「カッコイイ~~~!!」って感じです。菊田師匠のはそれにプラス「きれい」ですね。これにさらに迫力というかワイルドさが加わるのでしょうか・・・。楽しみです。

スクレーパーってサンドペーパーのようにきれいに削れるんですね、すごいです。プレート状の形がいろいろあるみたいですが、それは使い方が違うのでしょうか?

版画でもスクレーパー(形は全然ちがいます)ってあるんですが、それは金属番の縁をきれいに削り取るもので、全然用途もちがいます。これが・・私はきれいに削るのが苦手なんですけど・・・(汗)

「最適なアーチ」をさぐり当てるのが「職人の目」なんですね。
「木と会話ができる職人」ですね。
やはりモノ作りの基本は心ですよね。

うん!(勘違いがあっても、勝手に納得しております。)
Commented by 菊田 at 2007-09-29 15:29 x
森蔵さん、こんにちは。
そうですね、精霊君には、首までつかった温泉のように居心地が良いのかもしれませんね。
もちろん、完成した楽器にもくっついて行くと思いますので、時々、森林浴をさせてあげてくださいませ、、、^^。

森蔵さんの演奏でのカプリース全曲、、、もしくはラ・カンパネッラを拝聴できるのを楽しみにしておりますデス。
Commented by 菊田 at 2007-09-29 16:04 x
マルゲリータ山口さん、こんにちは。
クレモナは、急に冷え込んで、寒いです。
昨日は、我慢できずに、ストーブを点けましたです、、、、。

さて、表板ですが、、、、、。
もちろん、木目がまっすぐで均一なほうが、見た目も美しいので、そういう材料を選びがちになるのですが、肝心なのは、木材そのものの音響特性ですので、見た目だけで選んでしまうと、鳴らない楽器になる可能性もあります。
まっすぐなキュウリが美味しいとは限らないのと同じ?かもしれません。

ですので、材料を選ぶ時は、まず、年輪は見ずに、木の地肌そのものを見て、触って、叩いて、匂いをかいで、良い音がしそうかどうかを判断します。

クオリティの高い、良く響きそうな表板であれば、多少木目がゆがんだり不ぞろいでも迷わず使いますが、逆に、どれだけまっすぐで美しい木目でも、クオリティが低い材料は楽器製作には使いません。

ガルネリとストラドでは、ガルネリのほうが太い音というイメージがありますので、そういう音が出やすい木目の表板を選びますが、↑に書きましたように、質の高い材料を使っている限り、木目による音の違いはごくわずかだと思います。
Commented by 菊田 at 2007-09-29 16:23 x
Machakoさん、こんにちは。
そうですね、ほんとうに、物作りの基本は「心」だと思います。
というか、「心」というのは外からは見えませんが、それを見えるようにしたものが、「作品」ということになるのかもしれませんね。

デルジェズ、、、そうですよね、全体的に丸くて、なで肩なのに、なぜかワイルドでカッコいいんですよね~。

スクレーパーは、本当に便利な道具です。
ただの金属板を研いで、刃をつけたものですが、これが無かったらバイオリン製作はかなり困難だと思います。
いろいろな形がありますのは、バイオリンの各部のいろいろなカーブの変化に対応するためなのですが、厚さにもいろいろあって、その弾力を利用して微妙にたわませながら削るのが、スクレーパーを上手く使うコツだと思います。

版画でも使うのですね。
分野によって、いろいろな形に変化して、使い方も違うのがスクレーパーという道具の特徴ですね。
スキー板のチューニングにも使いますよね。

木との会話、本当に難しいですが、ほんの一瞬でも通じ合える瞬間があれば嬉しいですし、それがさらに演奏者さんへと伝わっていけば、製作者としてはとても幸せです。
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