コンクール速報、と、弟子入りについて。。

複雑なタイトルですみません。

まず、コンクール速報から。。

先日、ブレーシアの北のイゼオ湖畔にある、ピゾーニェという町で弦楽器製作コンクールが行われ、私の友人でありライバルでもある、高橋明さんが見事優勝を飾りました。
おめでとうございます!
コンクール速報、と、弟子入りについて。。_d0047461_842530.jpg


高橋さんのブログにて、詳しくご紹介されていますので、ぜひご覧ください。
ちなみに、私は、今回は参加しておりませんです。。


さて、「弟子入りについて」、、とは、意味深なタイトルですが、、。

最近、私のところに弟子入りを希望されるメールが時々届くようになりました。

ですが、私自身、まだまだ修行中の身でありますので、弟子を受け入れて自分の技術を伝える段階ではないと考えていますので、残念ながら、すべてお断りしております。

私自身、ラザーリ師匠に師事したい一心でクレモナに来ましたし、それがかなった時の喜びはたとえようのないものでしたので、私にメールをくださる人の気持ちは痛いほど良く分かりますし、皆様、それなりの決断をして、勇気を出しての行動だと思いますので、事前に私の意志を分かっていただければ、回り道をしなくて済むと思いましたので、今回、私の状況を説明させていただいております。

私も、いずれはラザーリ師匠から受け継いだ技術を後世に伝えたいですし、それは、技術を受け継いだ人間の責任であるとも思いますので、将来的には弟子を受け入れたいと思っておりますが、現時点では、私自身にまだそういう余裕が無いというのが正直なところです。

もし、私に弟子入りをと思っておられる方は、この記事をご覧いただけたら、再度ご一考をお願いいたします。

ご参考までに、蛇足ですが、だれかに弟子入りを希望されるようなメールを書く場合のアドバイスを、いくつか、、、。

フルネームはもちろんですが、住所、電話番号などの連絡先をすべて書いてください。
個人情報を知られたくないという気持ちからか、書いてこない人が多いですが、、、そもそも、信用できない相手に弟子入りをお願いするというのはおかしいですよね。

あと、バイオリン製作を志す理由、きっかけ、経験などを、できるだけ詳しく書くべきです。
弟子入りというのは、人間同士の、かなり深い部分を共有するかもしれない関係への第一歩ですから、詳しい自己紹介なしに弟子入りを希望することは、私の感覚ではありえないと思っています。

以上のことに関係するのですが、携帯メールなどの簡易手段は、伝えられる内容が限られるので、使わない方が良いですし、重要なお願いをする手段としては、軽すぎます。
普通のメールが使えなければ、手紙を書くべきだと思います。

最後に、私がラザーリ師匠に師事するまでの経緯を、かいつまんで書いておきます。

日本で修行中に、ラザーリさんのバイオリンを見て感銘を受けて、ラザーリさんに師事したい一心でクレモナに渡ったのが2001年でしたが、すぐにラザーリさんに会いには行かず、メールや電話などで連絡することも控えました。
まずはイタリア語を身につけてからでないと習えるものも習えませんし、第一、失礼になると思ったからです。
また、日本では10台以上の楽器を製作していましたが、イタリア流の製作方法をクレモナの製作学校で一通り勉強してからでないと、ラザーリさんのスタイルを学べないと考えたからです。

ラザーリさんと初めて話したのは、2002年の秋でしたが、その時も、弟子にして欲しいなどとは恐れ多くて言えませんでしたので、最初は、時々工房に通って、製作した楽器を見ていただいたり、ラザーリさんの仕事を見学させてもらっていました。

週に一度工房に通う生活を2年間続けて、徐々に信頼も得られてきた2004年、製作学校を卒業するというタイミングで初めて、「弟子にしてほしい」と伝えました。

学校のインターン制度で、その年の秋からラザーリ工房にて3カ月の修行をさせていただいて、それ以降も引き続き工房で作業をする、いわゆる弟子の生活がスタートしたわけです。

弟子になりたい、と決意してから、4年を費やしたわけですが、私は、弟子になるという事はこういうことだと最初から思っていましたので、苦にはなりませんでした。

なので、もしも私が現在、弟子を募集している状況だとしても、誰かから面識のない状態でメールなどで弟子入りを希望されても、そのまま受け入れることはおそらくないと思います。

少し重い内容になってしまい、失礼しました。

でも、メールで弟子入りを希望してこられる方の熱意を否定しているわけでは決してないことをご理解ください。
むしろ、その短い行間からこそ、本当の熱意を感じておりますし、心から応援しております。
ただ、弟子入りというのは、お互いに本当に責任の重い行動ですので、そこに至るまでには必要な段階がたくさんあるということをご理解いただければと思い、あえて書かせていただきました。


乱文失礼いたしました。

by violino45 | 2009-08-27 08:15 | お知らせ | Comments(4)

Commented by りんめいママ at 2009-08-27 09:00 x
お話、よくわかります。菊田氏の弟子入り経過についても、用意周到というか、しっかりしていらっしゃいますね。演奏家の世界でも、高名な先生に弟子入りするのは、容易なことではありません。また基礎の基礎の段階から、高名な先生に師事する必要もないと思います。しかし、一方で基礎は大事ですから、最初から良い先生につく必要もありますよね。

私たちは、台湾に住んでいて、子供のヴァイオリンの先生をどなたにお願いするか、日本とはちょっとかってが違いました。4歳からヴァイオリンを始めましたが、今は二人の先生に師事しています。もちろん最初から二人であったわけではなく、子供の室内楽をやるようになってから、その先生にも室内楽の曲を中心に見てもらうようになったのです。お二人とも、それぞれに素晴らしい先生で、子供との相性も非常に良いです。先生とのめぐり合い、縁も大事ですよね。
Commented by shige at 2009-08-27 21:30 x
菊田さん、こんにちは。
そうですか~。菊田さんが弟子入りするまでにも色々なことがあったんですね。

私の場合は親父が製作・修理をやっているという他の方達とはちょっと違う環境のせいかいまだに弟子という実感は無いんですよね(笑)
でもあるていど仕事が出来るようになってくると親父はすごいんだなと感じるようになってきました(笑)

弟子を育てるとゆうことは大切なことだと思いますがものすごく大変な事だと思います。
そのためにはある程度の余裕がないと出来ないと思います。

そうじゃないと弟子と一緒に共倒れになることだって有ると思います(笑)

菊田さんが弟子をとる気持ちが大きくなってきたら弟子を育てれば良いことだと思います。弟子ともなれば家族同然の付き合いが何年かは続くわけですからね。
私の場合は本当の家族ですが(笑)

以上若造が失礼なことを書きましたがお許しを。

では、また。
Commented by 菊田 at 2009-08-28 21:13 x
りんめいママさん、こんにちは。
重い内容の記事でしたが、、コメントをいただきありがとうございます。

そうですね、どの分野も、基礎をしっかり学んでこそ、初めてその上のレベルに進めると思いますので、良いタイミングで良い指導者に巡り会えることはとても大切だと思います。

私の場合、ラザーリ師匠に求めたものは、もちろん、「その上」のものだったのですが、、結果的に、基礎からじっくりと学ぶことができましたし、基礎を学ぶということは一生続くのだということに気付かせていただいたのもラザーリ師匠でした。

りんめいママさんのお子様も、良い先生に巡り会えたようで、なによりですね。

いつか、バイオリン演奏を聴かせていただけるのを楽しみにしています。
Commented by 菊田 at 2009-08-28 21:30 x
shigeさん、こんにちは。
貴重なご意見をありがとうございます。。

そうですね~、身近なところに師匠となる存在がいらっしゃるんですね。
ある意味、うらやましいですが、、、でも、身内で技術を伝承するのも、それはそれでいろいろと難しいこともあるのでは、、と想像しています。

ラザーリ師匠も、弟子をとるようになったのは最近ですし、やはり、自分なりのスタイルが確立したという前提が無いと、なかなか後継者を育てるのは難しいですよね。

でも、人に教えることによって、自分も勉強できるという側面もありますので、ある程度の時期が来たら、そういうこともやっていきたいと思っています。

共倒れにならないように、、、気をつけながら。。。

shigeさんの親方にも、いつかお会いしたいです。。
またお気軽にコメントくださいませ。。
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