今回は、「ヴァイオリンの横板」の話です。
ヴァイオリンの中でも、縁の下の力持ち的な存在で、なかなか目立たない「横板」ですが、非常に重要な部分です。
横板がしっかりしていないと楽器が鳴りませんし、長い年月の間に楽器全体がゆがんでしまいます。
今回は、そんな横板にフォーカスを当てて、動画でご紹介します。
3分ほどの映像になります、ご覧いただけたら嬉しいです。
ご視聴ありがとうございました。
では、動画のキャプチャー画像を見ながら、少し補足説明させていただきます。
横板は、裏板から切り出すか、市販されているものを使います。
どちらも、少し厚い状態ですので、まずはカンナで削って薄くしていきます。
仕上がり厚さに近づいたら、スクレーパーで少しずつ削り、仕上げていきます。
私の場合、仕上がりまで約0.1ミリの厚みに近づいたら、スクレーパーで作業します。
厚みゲージで測定しながら削っていきます。
ヴァイオリンの場合、1.2ミリ~1.3ミリの厚さにすることが多いです。
厚過ぎると、曲げづらいですし、楽器が重くなりますが、逆に薄過ぎると、構造的に弱くなりますので、兼ね合いが難しいところです。
内型に貼り付けたコーナーブロックを、ヴァイオリンの形に削ります。
この時点で、ヴァイオリンのシルエットが決まってしまいますので、精度が要求される作業です。
横板を、水に濡らします。
木材に水分を含ませることで、柔らかくなり、曲げやすくなります。
水に濡らすと、トラ杢が浮き出て、綺麗に見えます。
横板曲げ用の鉄ごて(ベンディングアイロン)は、200度Cくらいに熱しておきます。
動画でご覧いただきましたが、水滴を落とすと、瞬時に弾かれて球が転がるような温度です。
熱過ぎると、横板が焦げてしまいますが、熱さが足りないと、なかなか横板が曲がらず、割れてしまう原因となります。
濡らした横板を、少しずつ押し当てて、曲げていきます。
力を入れすぎると、トラ杢に沿って割れてしまいますので、慎重に作業します。
コーナー近くの、カーブが強い部分は、ブリキ板を使って押し当て、割れを防ぎながら曲げていきます。
一気に曲げてしまうと割れやすいですが、力を加えないとなかなか曲がりません。
また、トラ杢の深さによっても割れやすさが違うので、木材をよく観察することも重要です。
曲げ終わった、センターバウツ部分の横板です。
ここまで来ると、割れの心配もなくなり、一安心です。
削ったコーナーブロックにピッタリ合うまで、横板を精密に曲げます。
横板の曲げが甘いと、シルエットが崩れたヴァイオリンになりますので、地味ですが、重要な作業です。
キレイに曲げ終わったら、コーナーブロックにニカワで接着し、クランプで固定します。
この部分が、この先に続く、ヴァイオリン製作工程すべての土台となります。
上下バウツの横板も、同様に曲げていきます。
可能な限り、内型のカーブにピッタリ合うように曲げることが重要です。
曲げが終わり、接着前の上下バウツの横板です。
この時点で内型とピッタリ合ってなくても、強引に内型に押さえつけて接着することも可能ですが、不要なテンションが横板に残った楽器は、音にも影響が出ますし、将来的に、ゆがみが出る原因となりますので、精密に曲げることは大切です。
上下のコーナー部分は、左右の横板が隙間なく密着するように合わせます。
内型と横板に隙間が無いように、また、垂直を保つようにコントロールしながら、コーナーブロックに接着します。
動画をご覧いただくと分かりますが、この作業の時は、手が3本欲しくなります(笑)
横板が完成しました。
このアウトラインを裏板と表板にトレースして、ヴァイオリンの形が誕生していきます。
普段は、表板や裏板、ネックなどが表舞台で目立っていますが、「横板」無しではヴァイオリンは存在できない、大切なパーツですので、時々は、目を向けてあげてくださいませ。
寒い季節、猫たちはそれぞれ温かい場所を探して落ち着きますが、
ビッキーは他の猫の所にすぐに侵入します(笑)
でも、最後は仲良く一緒に寝てしまいます。
気がつくと、今度はクロ丸が侵入してました。
ちび丸だけは、寒い季節でも一人で澄ましてます。
私自身は、工房に引き籠ってばかりでは体力が低下していくばかりなので、今年は、少し寒い季節から少しずつ自転車でトレーニングしていくことにしました。
無理はできませんが、年間を通して体を動かしていければと思っております。